仕事をしないで生きていく方法を考える

生きていく方法はいろいろあると思うが、肝心なのは、自分で責任を取れるかどうかである。

花岡くんはヘコタレ精神であったが、自分の人生を自分で何とかしようと考えている。


仕事は、面倒な事ばかりだ。花岡くんは三十代で、勤続年数も10年以上になったので、それなりに管理する仕事も増えてきた。

自分の持ち前の仕事だけならさることながら、当たり前であるが、他の人のミスに対する、改善への促し、お得意様への対応と謝罪、等が毎日繰り返されるのはまだ良いとしても、感情的になってしまう従業員の愚痴や、どうしようもないことへの不満、小さすぎてポイントがズレている事への執拗な拘りなどに付き合っていると、流石の花岡くんもほとほと参ってしまうのであった。


もちろんそれに対する対策、伝え方、諭し方、などを毎日のように勉強し、実践し、切り抜けるのであるが、毎日毎日次から次へと同じような案件が繰り返され、そして、当の本人は、喉元過ぎれば熱さを忘れる感じで、間を空けて、また同じような場面で同じような不満を齎す…。


それらを繰り返しているうち、花岡くんは、最初は、それらに対する対処を何とかしよう!という思いから、分析、心理学まで調べ、捉え方、伝え方を研究しても、尚、止むことのない不満への対応、休みの日まで鳴り止まない電話に、とうとう、無気力、無力感を禁じ得ず、自分が何なのかさえ分からなくなったのであった。


その時に思ったのだ。

自分の生き方とは、何だろう。


花岡くんは、趣味でピアノも弾くし、小説も書くし、クリエイティブな事が好きではあったが、それらはみな、中途半端であった。


夢を託そうにも万人の求めている情報や、好まれる話や、喜ばれるアイテムが分からず、ただ、物事の本質や、本当の正しさみたいなものや、心の揺れ動きを表現したような抽象画を好んでいたら、当然ながら、モテることもなかったし、ツイッターのフォロワーも、インスタグラムのフォロワーも振るわなかった。


しかし、それでも諦めないのが、花岡くんの良いところ!抜け道を考えるのが大好きな花岡くんは、世間に沿わなくても、自分で責任を取れるのなら、そして、誰にも迷惑をかけないなら、どの様な生き方をしても良い筈だと、そこにフォーカスして、抜け道を探し出したのであった。


(この話は、つづく)

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