アイドルバッシングと春先清〜なみきに憧れ、なみきを超えたいと願った男と郁弥との出会い〜

世界三大〇〇

第0話

 郁弥は高校3年生で、寮生活をおくっていた。母の明菜の七回忌のために5年半振りに実家に戻ると、母が伝説的なアイドルだということを知ってしまう。その時、失踪していた父の陽一がTV番組に出演しているのを目撃する。陽一は、『生身のアイドルを応援することは、アイドルを傷つけることにもつながる』と言って、かつての母を完全に否定する発言を繰り返した。そして、『誰もがアイドルのプロデューサーになる時代が来た』と、今の時代に生身のアイドルは不要で、代わりにAIを搭載したVRアイドルという端末をPRしていた。

 そんな時に伯父の太陽から、アイドルのプロデューサーになれと突然言い渡される。そして、今まで遠い世界だった芸能界が急に身近なものとして郁弥を動かし始める。郁弥は太陽の命令で、かつて母のライバルだった月島真凛に会うことになった。そこで出会った真凛の娘の晴海は、先日、昌平ヒルズに明菜の声を聴きにきた少女だった。かつてアイドルだったことを後悔している真凛、これからアイドルになりたいと願う晴海。2人の対立を丸く収めた郁弥は、晴海と専属契約を結んだ。そして、それまでは苦手だと感じていた太陽に対し、憧れの念を抱くようになる。

 さらに郁弥は、太陽の事務所の所属アイドルである国民的人気アイドルユニットASKS84のエース、毛利優姫のマネージャーに抜擢される。

 その頃の優姫は、急に大人気になったことで、精神が不安定になっていた。周りの大人達が自分に都合よく動き回るようになったことから、気が大きくなり傲慢になっていた。専属のドライバーやスタイリストを立て続けに解雇したり、我儘で仕事を休むこともあった。そしてその傲慢さは、ファンにまで向けられようとしていた。そんな優姫のマネージャーになることに初めは乗り気でなかった郁弥だが、真剣に優姫と向き合い、ファンの大切さを説く。そして徐々に優姫の信頼を勝ち取っていく。ある夜、2人はドライブデートに行った。そこで優姫は、傲慢になっていく自分が怖いと、郁弥に悩みを打ち明ける。郁弥は『身近にいる人を大切にすることから始めれば、いつしかきっと、元の優しい姫君に戻れるに違いない』と優姫にエールを送ると共に、アイドルのプロデューサーになることを強く決意する。この物語は、その翌日から始まる。

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