『ジャズ大名』 「ええじゃないか」とは「わーい、たのしー!」である。

 アマゾンプライムで視聴。


 大政奉還が迫る幕末の日本に、三人の黒人奴隷が流れ着く。

 彼らを匿った城は、官軍と幕府軍の通り道となっている構造に悩まされていた。


 貧乏大名は三人からクラリネットを受け取り、浮き世を忘れてひたすら演奏に明け暮れるように。


 筒井康隆の短編が原作。


 前半一時間はずっと時代劇。


 残りの三〇分は、ただひたすら「演奏シーン」を流すという、とんでもない構成。


 気の利いた知恵を働かせて、戦況を打破する話でもない。

 終盤の解決策も投げやりだ。「通りたい奴らは全部通せ」。

 真面目な奴は一人もいない。

 そこにあるのは、ひたすらの快楽だ。

 政治的理念も存在しない。

 ミッキーカーチスがギターを鳴らし、タモリがチャルメラを吹く。

 そんな、カオスな映画だ。


 だが、それがいい。とても清々しく、美しく映る。


 世間の顔色をうかがって意見を変えることもせず、誰にも付かず、ただ状況を笑い飛ばす。


 当時の言葉を借りれば「ええじゃないか」、


 現代の言葉を借りれば「わーい。たーのしー」という作風と言えばいいか。


 それは逃避でもなんでもない。もっと別の思想だ。

「ええじゃないか」精神が見事に表現されている。

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