アテナイから

第1話 うさぎちゃん、発見。

 おばさんちに泊まった時だった。


「お母さんにメールするなら、リビングのノートパソコンを使っていいわよ」と出がけにおばさんは言った。

俺が何気なく、パソコン画面を開けると、おばさんがさっきまで使ってたクラウドソーシングサイトのままだった。


もう深夜。まだおばさんは、帰ってこない。今日は遅くなる、と言っていた。俺はシャーペンをくるくる回しながら、参考書を片付けた。俺が来てるのに外に泊まってくるかも?……ってちょっと、無責任じゃね?




……まあいい。


俺はインスタントのコーヒーを淹れて、一息ついた。別に同じ味。俺なんでこんなにテンション低いの。

なんで海外のおばさんちに来てまで、勉強?


 俺は、実のところ、家から離れて一人になれて、せいせいしてた。なんだか微妙な休みだった。


夏休みの直前、我ながら馬鹿だが、本当にくだらないことで無期限の停学を食らった。両親はガンガンに怒ったが、それを諌めて、間に入ってくれたのがおばさんだ。おばさんと言っても、まあ考え方は、ススンデルよな。少なくとも、俺の両親よりはマシだ。



進学進学と、あんまり追い詰めるからこんなことに……と、しばらくこっちにいらっしゃいよ、いっそもう学校やめて、こっちに留学するとか考えたら?とおばさんは言った。


俺にとっては「渡りに船」だった。まあ、おばさんは昼間はいつもいろんなところに俺を連れて行ってくれてるんだから、そろそろ自分の用事もあるよな。



 家にいても俺は、いつも年の離れた兄貴と比較されていて、うんざりだった。親の思う道を進んでるデキた兄。医大に進んで、モテモテぶりを俺に見せつけてる。隣の部屋でイチャイチャされたら、勉強どころじゃなくなる。




 離婚して独り身のおばさんは、どうせ今日は帰ってこないだろう。俺は、なんとなく、おばさんに悪いな、と思いながら、ネットを操った。無期限停学って、俺まさか、このままドロップアウトとか?さすがに嘘だろ……。


怒り狂う両親が透けて見える。中高一貫教育の男子校。成績優秀だった兄と学校でも比べられる俺。


お兄さんは優秀だったのに、弟は……アレだな。こんな成績じゃ、相当頑張らないと医者になれないぞ。


運の悪いことに、兄を受け持っていた先生が、今の担任だった。


いちいちうるせー。兄と弟の遺伝子が、同じ出どころかどうか、俺だって知らねえぞ。


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