先輩根性

ジジジ……

「ん……ふわぁ……。」

ガチャンッ


今日はいつもより早めに起きれたな。

目覚ましの10分後にかけてある、携帯のアラームもまだなってない。

俺はウトウトした目をこすりながらネクタイを締める。


ピーンポーン


「……はーい。」

誰だろ、こんな朝早くに。


ガチャ

「え……」

なんでコイツが俺の家を知ってるんだ…?


「おはようございます(^O^)」

(^O^)じゃねえよ!!なんだそのいかにもメールの顔文字みたいな満面の笑みは!!


「……なんでお前がいんだよ。」

ため息混じりの俺に、坂井は少しだけ困った顔をした。


……変な奴……。


出勤の準備を整えて、坂井と一緒に家を出ることになった。

「……先輩、家変わってないんですね!!」

は?


「お前、俺の事知ってんの?」

俺の質問に、坂井はきょとんと俺の顔を見つめた。

「僕のこと覚えてないんですか?」


……って質問返しかよ!!?

俺は一回睨んでわざとらしく咳払いをした。

「悪ぃ、覚えてねぇわ。……いつ会った?」


俺も質問で返してやった。

すると急に立ち止まって、俺の口に人差し指を当てた。


「先輩が思い出すまで内緒です。」

そう言って、坂井はウインクをした。


キモッッ!


何が「内緒」だよ!

俺は、即坂井の手を払った


「そういうのは、女にやれよ、女に。」


「フフっ相変わらず冷たいな、遥先輩は。」

チッ、その名前で呼ばれるの、なんかムカつくな…。

「その呼び方やめろ。うざい。」

俺はまた坂井を睨みつけた。


クソッ

背、高いな……ッ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・


こいつと仕事を始めて1週間がたった。




「コピー機つまらせるの何回目?」

「す、すみません……。」

「……それで済むと思ってないよな……。」


只今、後輩を説教中。

「なんでそんなことも出来ないの。前に教えたよな、紙多過ぎると詰まるから、ちょっとずつ補充しろって。コピー機だって傷めば会社の経費で修理をすることになるから、扱いには注意をしろって言っただろ!」

「……すみません……。」


あ~!!

ムカつく……。


普通……ここまで毎日キレてたら、……違う先輩がいいとか言って泣きつかねえか?

「先輩!!」

「……なんだよ……。」

俺がキッと顔を向けると、坂井は俺の下瞼をそっと触った。


「……先輩、クマ出来てますよ……。」

「……もともとだよ。」

今更になって気づいたのかよ!!……別に気づかれなくても良かったけど。


「いえ、前より濃くなってますよ。」

……は?

「先輩……疲れ顔です。」

うっ……。昨日、遅くまで資料書いてたからだ……。

よりによってコイツに気づかれるとは……。


「お前に気にされるほどじゃないから。」

俺がボソッと返した言葉がよっぽど切なかったのか、坂井はシュンとしてしまった。


「先輩、俺そんなに役立たずですか?」

「あ?なんだよ、いきなり。」


坂井は、さっきより小さくなってしまって…今にも崩れるんじゃないかってくらい、弱々しかった。


ったく……なんか声かけねえとだよな

「今日、飲み付き合え。」


「へ?」

「へじゃなくて!!……どうせ暇だろ……。食事だけでも付き合え。」

俺がボソボソとつぶやくと、坂井は顔をパァッと明るくして『はい!』と、会社中に響くくらいクッソでかい声で返事をした。



俺の耳壊れる。

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