僕らが届けた、大切な物

大臣

今。

 空から見える景色は綺麗だと、僕は思う。

 夜の星々と、真下に見える都会の夜景を同時に見れるのは、僕たち、鳥の特権だ。もっとも、今では自由に飛ぶことは、昔より減ったし郊外に移り住んだから、建物の数は減った。それでも、窓から見える星空も、十分に綺麗だ。

「なあ、ワタリ。今日の星空も綺麗だな。」

 僕の飼い主は、そう語りかける。

『当たり前だろ。ここほど美しい星空が観れる場所を、僕は知らない。』

 僕は、目の前にあるタブレットに、文字を打ち込む。全く、技術の進歩は良いものだ。

 昔は鉛筆で、紙に文字を書いていた。おまけにひらがなだけ。

 でも、僕に文字を教えてくれた女の子がどこにいるか、僕は知らない。

 昔は世界の全てを知っている気でいたのに、今では知らないことばかり。

 それでも、僕は探す。あの女の子の姿を。


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