進化
「……コイツ、翼竜進化したのか⁉︎」
突如空から現れたオリジナルを、苛立ち半分驚き半分に睨むアドルフは、突然訪れた危機的状況に焦りながらも冷静に分析する。
今のオリジナルは、ステージ2の時と比べても2〜3回りは大きくなり、より強靭な姿になっている。
身体中の棘はより鋭く、鱗はより分厚く、
ステージ2の時と比べても段違いに硬く、攻撃的になっていることが伺える。
そして何より、ステージ2の時まではなかった翼。
アドルフの言う、翼竜進化したことにより、さらなる力を得たようだ。
モンスターにはステージがある。
ステージ1は、種族としてもっとも基本的な姿をしている。
もっとも基本的な、種族が持つ固有の特殊能力を一つ持っていて、その力で獲物を狩る。
備える特殊能力は、個体によって違うが、一種族につき約5種類ほどをそれぞれ確認している。
例えばオリジナル。
地面を走り、獲物を走って追いかけて物理攻撃で仕留める、もっともシンプルなモンスターだ。
故に、特殊能力も、物理戦闘に特化したものばかりで、
1、筋力強化、
2、嗅覚強化、
3、視覚強化、
4、移動強化、
5、攻撃強化、
これらの内、ステージが上がるごとに一つ、解放されていくのである。
そして、解放した特殊能力に応じて、見た目も変化していくのである。
モンスターのステージは3が最大。
つまり最大で3つの特殊能力を持つことができる。
モンスターは、獲物を狩り一定量のエネルギーを蓄えると、進化を始めるのだ。
進化をすることで、ステージが上がり、さらなる力を身につける。
体力は倍になり、攻撃力、防御力も上がる。
このオリジナルはおそらく、ステージ1で攻撃強化、ステージ2で視覚を強化して、ステージ3で移動強化したのだろう。
攻撃強化をした場合、あのいかつい身体中の棘が生える。
視覚強化は見た目にはあまり変化はない。
が、視覚強化だと思った理由は簡単。
アドルフには、探知スキルがある。
そのアドルフですら気がつけなかったのは、単純に、移動強化に隠密効果があるのと、探知スキル外からアドルフを見つけ、急速接近を可能にした"目"があったと推測できるからだ。
視覚強化をしていなければ、移動強化した場合、動きが早すぎて、獲物を見つけられないというのもあるが、今回のアドルフには相性が悪すぎる相手だった。
目の前で勝ち誇ったかのように咆哮するオリジナルを、耳を塞ぎながら睨みつけるアドルフ。
ステージ3のオリジナル相手に、相性の悪すぎるスキル構成、
さらに丸腰状態ときたら、もはや勝ち目はない。
逃げるにも、移動強化したモンスターから逃げることは、よほどのことがなければ不可能。
終わり。
アドルフの脳裏では、明確に"死"を認識していることだろう。
だが、
アドルフの目は死んでいない。
「これで勝ったつもりか?」
喧嘩屋らしく、喧嘩腰に胸を張って拳を握るアドルフ。
「お前は最初に殺す相手を間違えた」
今にも飛びかからんとするオリジナルに一歩も怯まずにただ話すアドルフ。
「誰かが死ぬと発動するスキルがある‼︎」
バリィィィィィン‼︎
魔法陣が無効化された通知が表示される。
ちょうどアドルフの視線の先、オリジナルの真後ろだ。
「――――っ⁉︎」
思わずそちらに目がいくオリジナル。
どうやら、オリジナルが進化して、勝ち誇っている間に誰かが魔法陣を無効化したのだろう。
「やったな、哲郎‼︎」
ニヤケが止められないアドルフ。
視覚共有。
というスキルがある。
哲郎のスキルだ。
フィールド内で誰かが死ぬと発動し、一定時間生存者の視覚を共有できるようになるスキルだ。
これにより、カルロスの死後、全員の視覚が見えるようになっていたのだ。
そして、アドルフの前にオリジナルが現れたのを見て、哲郎達は、大胆な動きを開始、誰もいない、なんの脅威もないフィールドを全力疾走。速攻で魔法陣を見つけ、無効化に移れたのだ。
さらに、アドルフがオリジナルと遭遇したことにより、このオリジナルの全ての特殊能力が明らかになった。
「これでお前を倒す計画も立てられる‼︎」
通知が消え、一瞬あっちにいこうか悩んだ様子のオリジナルだったが、やはりまずは目の前の獲物を狩ることにしたよで、アドルフに向き直り、攻撃の姿勢になる。
が、
「!?」
すでにアドルフの姿はない。
オリジナルの視線が外れた一瞬の隙にさっさと逃走していたのだ。
「グオォォォォォォォォォォォ‼︎」
悔しそうなオリジナルの咆哮が響いた。
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