2.[歓迎会]

キキィ。

浩仁「あとで、俺んち来いよ。6時半ぐれぇに」

僕「わかりました」

そう言って回れ右をして、実家のインターホンを鳴らす。

ピーンポーン

その音が反響した。

ガラガラガラ

引き戸が開いて、祖母が出てきた。

祖母「あらまぁ。お帰りなさい源ちゃん」

僕「ただいま」

祖母「お上がりなさい」

僕「おじゃましまーす」

ガラガラガラ…

祖父「お、源田じゃねーか!」

僕「ただいまおじいちゃん」

祖父「そっかー。夏休みか!いつまでいるんだ?」

僕「31日までだよ」

祖父「そっかそっか。8月終わっても土日があるんか!また賑やかになるのぉ」

祖母「今日から料理が大変ねぇ」

僕「あっ、今日は大丈夫。歓迎会開いてくれるらしいから」

祖母「分かったわ。まずは部屋に荷物おいてきたら?」

そう言われて、奥の自分の部屋に向かった。

5年ぶりかぁ。懐かしいな。5年前、散らかして出たから相当汚いだろうなー…。

サーッと襖を開けた。

あっ、おばあちゃん、片してくれてたんだ。

部屋は整理整頓され、布団もキレイに畳まれている。壁の落書きは思いでとして残っている。多少は消えている…が。

ドスンと、部屋のど真ん中にリュックを置いた。そのリュックの中から、多分必要であろう服や時計、筆箱、ゲーム機等を引っ張り出す。そして、タンスにしまったり、机の上に出したり、コンセントに繋いだり…。そんなこんなで5時になっていた。

そろそろいかないと遅れる。

僕「おばあちゃん、おじいちゃん、行ってくるね」

祖父母「はーい、気を付けるんだよ」

ガラガラガラパタン

長い下り坂を下り、T字路を右に曲がった。すると畑の向こうにあるのが、狸田さん家だ。

十字路を左に曲がって到着した。昔ながらの家屋と言った感じだ。直ぐ横にサニートラックが止まっている。

ピンポン

短く鳴った。

ガラガラガラ…

引き戸が開く。

浩仁「お、来たか!みんなー、源田の到着だ!源田、上がれよ」

僕「おじゃまします」

そう言って、引き戸を閉じた。

正則「源田さん、久し振りです!」

僕「お、正則!元気だった?」

正則「おかげさまで」

そう言う挨拶をほぼ全員にした。

浩仁「ささ、全員座れよ。料理が来るぞー!」

その合図で奥の台所から数多くの料理が運ばれて来た。その数はなんと、90品目!それらがどんどん長机へ並べていく。

まだ高1の正則君や京一くんは物凄い勢いではしゃいでいる。しかも目をキラキラ輝かせて…!

浩仁「源田の帰りを祝ってー!?」

皆「かんぱぁぁぁい!」

帰ってきたんだ。空南に。5年前、僕が12歳まで生まれ育ったこの村に。途切れた空南村の思いでがまた再開する。

ただいま空南。ただいまみんな。ただいま。

友一「おい、なんだよ。食わねーのか?」

隣の友一が顔を覗く。

僕「いやー。帰ってきたなって。実感してた」

純一「まぁ、5年ぶりだもんな。そりゃ、実感わくだろ?」

正則「そー言えば、央里さんは?」

そう言えば、央里だけが遅い。というか居ない。村に戻った時も央里だけ見かけなかった。

浩仁「あ、央里!」

まさかの?浩仁さんは家の裏に言ったけど、まさか、誘うの忘れてた系なカンジ?

10分後、浩仁さんと央里先輩が今に入った。

央里「いやワリィワリィ。遅れてっておい!もう食ってんじゃねえかよ!待ってろって言ったのに!」

浩仁「いやワリィワリィ。おせぇからよ。帰っちまったかと…」

央里「ぬぁーにー!!」

純一「落ち着け央里。興奮して目上の人にため口はよくねぇぞ?」

央里「あ、ゴメンナサイ。ついついため口になりました」

浩仁「あー、いいよ。さっさと始めたの俺だし」

正則「…ささ、食べよ!」

央里「そうだね」

まずは酢豚。そして唐揚げ。次はしょうが焼きって肉しかないっ!?いや、それはないか。長机の上にちょこんと3m間隔でサラダが置いてある。あのサラダ、某ゲームの辰〇さんだったら一口で食べちゃうだろう。

肉は一時間でほぼ無くなった。僕もみんなもお腹一杯な所へ物が来た。

僕「で…でけぇ」

つい、呟いた。30cm経口のサラダボールに高さ1mのサラダの山があった。それが3つ。いくら10人(四捨五入)いると言えど多すぎなのでは…?

いの一番にサラダに飛びついたのは純一さん。待ってましたと言わんばかりに次々とっていく。

友一「あれ、サラダ食わないの?」

僕「あ、食べる」

一瞬、違う世界に言ってたのだが、友一が戻してくれた。

僕は一番近いサラダの山に取りに行った。器に盛り直しゴマだれをたっぷりとかける夏野菜サラダ。うーん。美味しそう。

僕はそれをつまみ、ぱくっと口へ放り込んだ。

んー!おいしい!なんとみずみずしい野菜たち!肉の油だらけだった口を野菜たちが潤していく…!

……

僕「あー、おなかいっぱい」

皆「ごちそうさまでしたっ!」

浩仁「皆でいっせーのっ!」

皆「お帰りなさい!」

ふただび、空南村に帰ってきたことを実感した。このまま、このまま8月が終わらなければな…。

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