戦に躙られる中国、その狭間を行く旅語り

三国志の時代に続く五胡十六国時代の中国、そこを旅する漢人が見たものを綴るルポルタージュ風味の連作短編。

カクヨムの歴史・時代系は中国史をテーマにしたものも多いんですけど、あえて戦と戦の狭間にあった平和な時代を舞台に、当時の風物を取り上げていることに目を惹かれます。自分の知らない「毎日」が1800年も昔の中国で営まれてたんだーって、すごいロマンじゃないですか!

しかも中国は広い! いろいろな民族がいて、だからこそいろいろな出会いがあって……旅している主人公の目や心情を通して、私たち読者はなにより鮮やかで、実になんでもない4世紀の情景を味わうことができるんですよ。
言ってみれば、マーク・トウェインの旅行記みたいな滋味深さですよねぇ。

けして華やかじゃないけれど、地に足の着いたリアリティ。迷わずおすすめです!

(夏はサクサク! 短い4選!/文=髙橋 剛)