けものストーリー【RPG】

みずかん

【ビクトリアアイランド編】

第1話

「キタキツネ...、あなたまだやってるの?」


「ちょっと待ってよ。あと1レベルで三次転職出来るから...」


キタキツネはパークでパソコンが見つかってからというもの毎晩“オンラインゲーム”という物に熱中していた。


「そんなにやってると、“廃人”になるって博士言ってたわよ」


「そんなのもうなってるよ」


「(開き直っちゃって...)いい加減にしなさいよ?」


呆れた様にギンギツネは言った。


さて、この温泉宿今日は珍しく何人もの来客がいた。



「偶にはこうやってロッジ以外で創作っていうのもなかなか良いものだね。

君の誘いに乗って良かったよ」


「先生に喜んで頂けて良かったです!

この後お風呂入りましょう!」


「...、どれだけ風呂が好きなんだ?

もう昨日から5回ぐらい入ってる気がするんだけど...」


「5回!?そんなんじゃ少なすぎますよ!」


(変な奴だな...)




「久々に長の仕事から離れてのんびりするのも、良いものですね。助手」


「そうですね。雪山は静かで、とても落ち着きます…」




「いやー、セルリアンが出たのが雪山で良かったですね!すぐ休めてよかったですよ」


「不幸中の幸いって言った所ですかね...」


「今日はもう遅いから、夜を明かすだけだ...、ずっとここにいるわけじゃないからな?」


「ヒグマ先輩、とか言っちゃって本当はずっといたいんじゃ...」


「クスッ...」


「リカオン...!べっ、別にそういう事じゃない!ハンターはセルリアンが出たら倒しに行くものだろ!それにキンシコウ!さりげなく笑うんじゃない...!」




「皆でまた温泉に来れるなんていいね!」


サーバルが笑顔で言った。


「だいぶ落ち着いたからね。

久々にゆっくりできるね。 サーバルちゃん、お茶でも飲む?」


「わ、わたし猫舌だから...」


「じゃあ、ふーふーしてあげるよ」





「ぐがー...、ぐがー...」


(アライさんっていびきも煩いし寝相も悪いけどそれでも...

嫌いになれないよね...ふふっ)


「あっ、ふぇねっく!?」


「...!?」


「あふぅ...」


(寝言か...、ビックリした...)




皆寝静まった頃の夜23時頃...


「やった...やっとレベル上がった!

お金も溜まったし、これで強い武器を買って...」


ゲーム画面を見ると見知らないアイテムが落ちていることに気付いた。


「なんだろう。これ」


そのアイテムを習得し、アイテム欄の説明を読む。



ーーーーーーーーーーー

【冒険の書】

????????

ーーーーーーーーーーー


「なにこれ...、バグかな?」

(でも、なんかそそられる...)



カチカチッ



マウスで、そのアイテムをダブルクリックした。




その時であった。



「えっ...!?」




眩い光に包まれたのである。



時同じくして、ほかの者達も奇妙な現象に巻き込まれていた…。

キタキツネがそれを知るのはすぐ直後の事である。





「ん...?ここって...」


だいぶ気を失っていた。

目を開けて辺りを見るとそこは森の中だった。しかし、そこはキタキツネにとって既視感のある場所だった。


「あぁ...、痛たっ...」


その声で後ろを振り向いた。


「えっ...、かばん?」


「あっ、たうっ...、じゃない、キタキツネさん?」


「何でこんな所に...」


そう疑問を口にすると、


「いたっ!」


「うおっ!?」


「うっ...」


3人連続で落ちてきた。


「博士さん、タイリクさん、ヒグマさん!」


かばんは駆け寄った。


「大丈夫ですか...?」


「全く何なのですか...」


「...ッ、何なんだ。夢じゃないのか...?」


「どうやら奇妙な漫画の世界に入り込んだのかな...」


3人とも困惑している様子だった。


「ちょっと、みんな落ち着こう。

まず、ここに居る人って全員旅館に泊まってたよね?」


キタキツネはそう尋ねた。


全員は肯いた。


「キタキツネさん...、僕、寝てたんです。その時見た夢が、サーバルちゃんが鏡の中に吸い込まれる夢だったんですけど...」


かばんの奇妙な夢の話に他の者も思い出したかのように口を開き始めた。


「確か...、助手も黒っぽいその...鏡の中に...」


「私もだよ。単なる夢と思ってたんだけど...」


「ウチの夢は2人もだったよ」


キタキツネは腕を組み自分なりに考えた。


(あの冒険の書をダブルクリックしたら

眩い光に包まれて、ある者は鏡に囚われ、ある者はこの地へ...)


「それにしても、ここ一体どこなんですか?僕達は雪山にいたのになんかこんな森の中に...」


キタキツネはもう一度辺りを確認した。

そこでハッと気付いた。


「みんな...、ここ...、ゲームの中だ」



そう言った瞬間、4人は戸惑った顔を浮かべた。


「えっ、ゲーム?」


「そんなまさか...」


「ははー...」


「ウソだろ...」



「この前パソコンを博士のところに持って行って、かばんも直すの手伝ってくれたでしょ?」


「ああ、はいはい、覚えてるのです」


「僕もしっかりと...」


「それでそのパソコンに

“オンラインゲーム”って言うのを見つけたからダウンロードしたんだ。

そのゲームに出てくるマップの背景に

そっくりなんだよ」


「それは...、本当にゲームの世界だって言いきれるのか?」


ヒグマはそう尋ねた。


「もし、この先に女王が居たら間違いなく、ここはゲームの世界だよ」


自信を持ってそう言い張った。


「とりあえず僕達だけじゃ、何も解決する術が見つからないので、その人の所に行って、話を聞いてみましょう」


かばんの提案に、全員頷いた。


そして選ばれた5人はゆっくりと森の先に歩き始めたのだった。


これからとてつもなく長い物語(ストーリー)が始まるとは、まだ誰も知らない。




「ここは...、どこなのだ?」


「うん...?」


この2人も、見知らぬ場所で目が覚めた。

辺りは洞窟の様な場所だった。


「...!貴方達!」


その声に気が付いたのか、オレンジ色の髪をした女性が慌てて駆け寄ってきた。


「あなた達は誰!?」


「あっ、アライさんなのだ...」


「フェネックだけど...」


「いい?ここは危険よ...。

取り敢えず、今から我々の基地に貴方達を転送するから!」


女性がショルダーバックから取り出したのは灰色の地図だった。


「ベースに帰還して!」


「のだっ...!?」


「なにこれ...」


眩い光を放ち、三人を飲み込んで行った。




ウィーン...ウィーン...


「コウザンナイ、異常ナシ...」

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