第3話 入学祝

「オカマじゃねぇぇーーーか!!」


テレビから女の悪霊が出て来るかと思いきや、想像の斜め上を行く

異世界のオカマが飛び出して来た。


「オカマじゃないわよ・・・マカオよ!マ・カ・オ」

紫色の口紅と同じ髪色をした。ロングヘアーのオカマが上半身だけをテレビ画面から出しながら俺の方を見てくる。


・・・気持ち悪い


「それじゃあ、引野くん」

そんなオカマことマカオが俺の肩にそっと手を添えてくる。

「行きましょおぉぉかぁぁーーー!!」

「ぎゃあぁぁーーー!!」

俺の腕を脇に挟み込み、外れない様にして、テレビの中へ引き釣り込もうとしてくる

「ちょっ・・・ちょちょっ・・・ちょっと待っ・・・ちょっと待って!!」


―――急展開過ぎるっ!!


凄い力でテレビの中へ引き込もうとするのを渾身の力で食い止める

・・・こ、こいつのどこに、そんな力が!?

別に見た感じ マカオ自体は、男だが・・・

ムキムキという体つきでは、なく!

俺より少し細いぐらいなのに・・・


―――チラっ!!


・・・・・・ん?


・・・チラっ!!・・・チラっ!!


胸元がざっくり開いたシャツからチラチラと垣間見える。マカオの胸板は、凄く引き締まっている。

いわゆる細マッチョというやつだ!!

「いや、ちょっ・・・ちょっと待って・・・まだ、行くとは、言ってないだろ!!」

「―――あら、そうなの?」

引っ張る力を緩め腕を放す


「・・・ハァハァ・・・ハァハァ・・・と、とりあえず・・・一息つかせてくれ」

テレビから少し離れたベッドへ腰掛ける


「まー すぐに返事をしなくても・・・のは、あなただけだから・・・」

そう言い終えるとマカオがテレビの中から俺の部屋へと入って来た。

マカオには、色々と言いたいことや聞きたいことが沢山あるぞ!

まず、靴脱げよ!や アニメの映像止まっているぞ!これ弁償してくれるんだろうな!!

―――と言いたいところだがそれより、どうしても気になる言葉がある


「・・・選ばれた?」

「そうよ!あなたは、選ばれたのよ!!私が勤務している学園への転入が・・・―――この世界の人間であなたが選ばれたのよ!!」


・・・い、異世界の学校へ

・・・転入!?


そして真っ黒な学生服を拡げて見せてくる

その制服は、見た感じ学ランと全く同じデザインである

「あなたのことは、調べたわ」

胸ポケットから手帳を取り出し、読み上げていく


引野ひきのゆう・・・16歳・・・身長170㎝体重61㎏の平均身長平均体重の平均的な体型、性格は、基本、優しいがたまに人の話を最後まで聞かない癖がある。学校では、あまり目立たないタイプだが朝までネットゲームをして学校へ行くので授業中は、睡魔に襲われて先生によく注意される」


・・・すごい

全部当たっている!!

なんでそんな事細かに俺のことやこの世界の事を知っているんだ?

まー異世界の力を使って調べたと言われれば、それまでなんだけども・・・


「あと深夜やっているタイトルがエロい映画をよく録画する」

「最後のは、言わなくて良くない!?」

「おっぱいバレーは、エロくないわよ」

「やかましいわ!!」


―――知らなかった!!

・・・あの映画・・・エロくないんだ!?


「そんなことより!なんで俺が選ばれたんだよ」

自分で言うのも何だが、こんな評価の人間が選ばれた理由が解らない

「それは、あなたが・・・唯一、この世界で異世界へ転送できる人間だからよ」



・・・唯一

・・・転送



―――良い響きだ!!

その言葉ワードに興奮し一人妄想を膨らませる

こんなのマンガやアニメで見る主人公そのものじゃないか!?

ということは、あれか?俺は、唯一この世界で異世界へ転送されている間、その衝撃に耐えられる人間・・・とか?


―――いやいやいや!!


自分の体のことは、自分が一番わかっている!体力は、学校処か家からも全く出ないから・・・

―――それは、ないな

なら残る選択肢は、一つしかないな!

―――前世だ!!


俺は、前世でモンスターやドラゴン、魔王を倒した。誰もが憧れる伝説の勇者で、その生まれ変わりだから・・・何か特別な力が秘められている。

・・・うん!そうだ!!

そうに違いない!!


「―――あなたは、この世界で突然いなくなっても困らない人間だからよ!」


・・・・・・え?


「神隠しだー!って騒ぎにならない人間が条件なのよ!あなたの両親は、今、海外へ出張していて、突然あなたがいなくなっても気付かない・・・それにずっと引き込もって学校へも行ってないからクラスのみんなや先生までも心配する人間は、誰もいない!」


・・・・・・


「―――喜びなさい!!あなたは、選ばれたのよ!!」

「嬉しくないわ!!」

クソ!舞い上がって損した!!

そんなこと言われたら絶対、異世界なんかに行ってやるもんか!!


・・・ぐすっ

わかってたけど改めて言われると泣きたくなる


「そ、そんな・・・お、落ち込まないでよ~」

膝を丸めて座り込んでいる引野を慰めようと声を掛ける

「・・・そうだ!?―――もし、異世界へ転送して私の学園へ転送して来てくれたら・・・人気者になれると思うのにな~」

「―――っ!?」

その言葉に肩がピクッと反応したのを見逃さず畳み掛けてくる

「モテモテで・・・ちやほやされると・・・思うのにな~」


・・・モテモテ

・・・ちやほや


―――良い響きだ!!


「・・・・・・ほ、本当に?」

元気を取り戻しマカオへ視線を向ける

「本当よ~・・・それに取って置きの入学祝を上げようと思ってるのに」


・・・入学祝?

キスとか言ったらぶん殴ってやる


「―――異能力よ」


その言葉を聞き終えるや否やマカオへ抱き着いた。

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