第51話 二つ名
「はぁ、ヒドイ目にあった……。」
『セレス、熱かった?』
「日焼けでヒリヒリする。」
『ふん。』
『加減は苦手なのよ。』
長時間、日なたで肌を晒したわりには。ムズムズする前面を労わりながら村に戻ると、外周を警備しているオッサンたちがニヤニヤしていた。
私に何か……あっ。
そそくさと体を隠しつつ、ディアに「食堂へ戻ろう?」と提案してみた。
ディアが笑顔で小さな布切れを差し出してくる。何?、この圧。
持ってたならもう少し早く出してほしかった。ハンドタオルの大きさ1枚で、どう隠すの? みんなに見せながら歩く趣味無いからね?
私がタオルを受け取ると、ディアは私の後ろに回る。目で訴えてみたが通じなかった。今日、色々と察してくれてたのに!
なるべく人の目に触れないよう食堂前に着いた時、ディアに腕をつかまれた。
さっさと裏から入り、服を着たいのに!
「タオルしかないからね? 裏手から入ろおおディアぁ―――!?」
大殿筋と腰のくびれ辺りを本来の力で押され、エビぞりの恰好で食堂へなだれ込む。
食堂の床は2段上がっているので、当然私の足下も上がる。
急に走りにくくなった私は足がもつれ、前倒しになった。
……タオルを放さなかった事をほめてほしい。おかげで顏を強打した。
野太い歓声が起きた。
昼食時の食堂は、全てのテーブルを埋めるほど客が来る。そんな場所にタオル一枚の少女たちが倒れ込んだのだ。男どもの興味を引いただろう。私でも見るわ……泣きたい。顏も痛いし。
上半身を起こした私を、厨房から出てきたアンナさんが見つけ、目を見開いた。
「セレス!? あんた何やってんだい! こっち来なっ!」
「ちょっ、引っ張らな……。」
誰かの口笛と、アンナさんの怒声が響いた。そして私は二つ名を獲得した。
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「おめでとう? プフッ。」
「……。」
「難しい顏しちゃって? 『桃』ちゃん?」
「くっ。」
「戻れないわけだし? 気にしても仕方ないわよ?」
「……にしてやる。」
「え? 何て?」
「もぅ! 仕事、倍にしてやる!」
「ええ!? 今でさえアレなのに増やさな――って待ちなさい! もー!」
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今日の被害
セレス:二つ名『白桃』 「なんか嫌な視線が……。」
???:仕事量倍 「あ”あ”あ”」
ディア:すり傷
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