第12話 脛蹴り 宿なし おもり無し?

 梯子はしごを上りきると、私を蹴り落したであろうギルド員に迎えられた。ゆったりしたローブからのぞく、満面の笑みで。手が【ギギ】に伸びかけた。


「どうでしたかぁ? 風を感じましたかぁ?」

「えぇ、十分過ぎるほどにね。」

「そうでしょう、そうでしょう。説明しませんでしたし! ナッハッハッハ!」


 殴りたい、その笑顔。身振りを交え誇張しながらを語っている。なんかキラキラしてるように見える……幻覚だろうか。とりあえずすねを蹴っておいた。


 私は悪くない。そこに脛があっただけだ。


「で、何で蹴り落としたわけ? お金稼ぎに来たんだけど!」

「素質がある人は、これで『風読み』を扱えるようになるので……新人はんですよ。」

「ふーん、で、仕事は?」

「あれ? えーっと仕事ですね……登録初日なので、紹介できるのは2つですね。」


 袖口に手を突っ込みゴソゴソと何かを探す職員。そんなところに仕舞ってるのか……。大丈夫なのかな。

 おもむろに取り出した皮紙と金属片を、こちらに差し出した。

 見たことのない文字だったが読める。この体の持ち主の記憶のおかげなのだろう。


「ふむふむ……何これ。」

「バラン、とメラヤニ?」

「あなたの容姿でしたらメラヤニをして頂きたいですね、もちろん強制はしませんが。日給10銅貨で1食付きです。」

「えっと、仕事内容は?」

「バランは荷車の荷下ろしや倉庫内の入出荷の手伝い、配達もですね。力仕事なので男性を求められています。メラヤニは、平たく言えばです。」

「……メラヤニで。」


 この体で力仕事は厳しい。梯子を上っただけで、腕が痛い。やりたくはないが、接客の方がマシだろう。場所を聞くと、先ほどの食事処だったので行くことにする。

 あ、さっきのおばちゃんだ。


「こんにちは。また来ました。」

「あ~あんたかい。まさか、お腹へったのかい?」

「ギルドからメラヤニの……」

「あ、あんた! 正気かい!?」


 ……おや?


――――――――――


「ウエイト、レスでおもり無し? 安直ね。」

「怒られますよ?」

「……そういえば『風読み』覚えても、感知できるかしら。」

「難しいですね。魔力を持っていないですし。」

「手助け、になっちゃうか……。」

「です。『夢見』でも厳しいですね。します。」

「う~ん……。」


――――――――――


被害

ギルド員のすね「新しい扉が……。」


補足

バランもメラヤニもインドネシア語から

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