第7話 跳ねて、ふわりと、歩いて

 10回はバウンドした。


 相棒わたしの被害を考慮して走ってほしい。マノンが跳ねるたびに空中に投げ出され、木に激突し、地面に体を強打し、風の回復魔法で癒され、すくい上げられる。途中からは『辞世の句』までんでいた。


 山頂から岩肌を下り、そろそろ森を抜けるという所でマノンはようやく止まった。時間にすれば短いが、刺激的な経験だった。

 マノンとは関係を築けそうだ。より、物理的な。


「ふぅ~、散歩って気持ち良いね!」

「……。」

「あ、村があるよ!」

「風穴を開けてやる……。」

「ヒィ!」


 一通りのオシオキが終わり、マノンを見ながら考える。こんな巨体のウサギが出てきたら、村は騒ぎになるだろうなぁ。


「マノン、村に入る時は大人しくできる?」

「できるよ? でも小さくなっておこうか。」


 と、言うや否やマノンは小さくなっていき、ロシア帽のような白い毛皮の帽子になった。10センチ程度の耳がピコピコ動いてる。それに手のひらサイズのポンポンが背中側に垂れている。触ったら怒るかな。これなら騒ぎにはならないだろう。

 ……本当に体積とかどうなってるんだろ。


「似合ってるかな?」

「セレスが似合わなかったら、ほとんどのには似合わないよ。」

「……あ、ありがと。」


 帽子姿は似合ってるらしい。髪を少し整えて歩き出す。ふわり、と風が舞う。不思議な感覚……風をまとっているかのよう。


「村までもう少しだね。言葉は通じるのかな。」

「どうだろねぇ。」

日向ひなたぼっこして良いご身分だね? ?」

「くるしゅうない、揺らさず歩け~。」


 あとで絶対、ピンクッションの刑だ。村が見えているから、さっさと入ってしまおう。


――――――――――


「あのゾクゾクするような目……。」

「あの毛玉は懲りないですね。」

「帽子のまま戻らないようにしちゃおうかしら。」

「あとあと面倒なことになりませんか?」

「だって……あの欲しくない?」

「……やりましょう。」

「あ、ノっちゃうのね。」


――――――――――


被害

マノンの尻尾付近「しばらく座れないなぁ……。」

マノンは『帽子の呪い(笑)』を得た。

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