義理の妹が彼氏の僕を女装させイチャイチャしてくる。

不可侵条約

　夏休みが終わり久しぶりの学校、僕は席に着くなりいつも以上に感じる視線に戸惑っていた……

「おかしいな～、いつも告白とかされたらこうなるんだけど……」

　僕は自分で言うのも何なんだが、モテる。

　でも男としてモテるというよりは、何かステイタスの様な、可愛い顔をした彼氏を皆に見せびらかしたい様な、良く芸能人と結婚して見せびらかす金持ちの様な、ブランド物を買う様な感覚で、学校のかなりランクの高い女子から良く告白される、時々男子からも……

　そして僕はその告白を片っ端から断っていた。

　僕は自分の外見が嫌いだ、自分の外見よりも中身を見て欲しい、そう……ネットで出会った天音の様に……

　でも今日はまだ告白はされていない、夏休み前も特に何も無かったし……僕は席に座るなり針のむしろに立たされていた。

「ちょっとちょっと渡ヶ瀬……君?」

いつもの様に僕がクラスで注目を浴びていると決まって話しかけてくる中学からの腐れ縁、少しチャラい感じで超ミニスカートを履いた日下部 緑（くさかべ 　ゆかり）が僕に話しかけてくる。

「なぜ疑問形?」

「えっと……渡ヶ瀬……くん……まさか夏休みに初体験済ませちゃった?」

「え!」

　な、何で知ってる?　旅行で天音とキスをしたことをなぜ縁が、いや、待て、知ってる筈がない。

「やっぱり……渡ヶ瀬くん……遂に……処女を捧げたのね……」

「何でだよ!」

「いや、だってもうなんか滲み出てくる女子らしさが半端じゃないもん、皆びっくりしてるよ、遂に渡ヶ瀬君が本当に女の子になっちゃったって」

「あ、いや……僕は男だよ……一応」

　一瞬いつもの癖で天音のセーラーを着てるのかと思ってしまった……天音の前ではなるべく女の子で居ようとは思っているが、普段は普通の男子高校生、今はちゃんとズボンを履いている。

「あれ～～あれあれあれあれ～～?　いつもはそこで僕は男だ!　って強く言うのにい～～今日はどうしたの～～?　やっぱり夏休みで何かあったのねえ、ひと夏の経験をしちゃったのね」

　縁はニヤリと笑いながら肘で僕の肩を突っつく……

「ひと夏の経験て……おばさん臭いぞ縁」

「まあまあ、ほらお姉さんに話してご覧、楽になるよ」

　ああ、めんどくさい……でもこれでも縁には助けられて居るんだよな、こうしてクラスの雰囲気が悪い時に話しかけて僕が孤立しないようにしてくれている。

「えっとね……実は」

「ウンウン」

「僕……彼女が出来た……」

「…………えーーーーーーーーーー!!」

「えーーーーーーーーーーーーー」

「ええええええええええええええ」

　縁と同時に周りの女子数名が悲鳴をあげる……聞いてんなよ……

「か、か、かかかか彼女?　朋に彼女、彼氏じゃなくて?」

「彼女だよ!　僕は男だって」

「えーーーー、朋君……付き合う気あったんだ……」

「ええええええええええ、うえええええええええええん」

「ちょっとちょっと」

　女子数名が僕の周りに駆け寄ってくる、ええええどういうこと?

「あのね、うちのクラスには朋のファンが一杯居るの、皆不可侵条約を結んでいたの」

「不可侵条約?」

「あああああああああああ、朋君が朋君がああああああ」

「誰?　朋君は誰とも付き合わない付き合う気は無いって言ったの!」

「こ、こんな事ならあたしが～～ダメ元で砕ければああああ」

　教室が大混乱、女子の半数が僕の周りに集まり、ギャーーギャーーと騒ぎ立て、残りの半数は抱き合って泣いている……男子数名がハンカチを目にあてているのは見ないことにしておく……

「ちょっと待って……えええええ?　どういう事?」

「はああ、やっぱり分かって無いのか、あのね朋はアイドルなの、女子の夢なの、簡単に付き合っちゃ駄目なの」

「ええええええええええ、だって縁前に友達紹介してくれたじゃないか」

「あれで私周りから物凄く怒られたんだよね～～」

「この間だって紹介しようかって言ってたじゃないか!」

「ああ、あれは釜かけてたの、朋に好きな人が居ないかって」

「えーーーーーー」

「あそこで全く乗って来なければ好きな人が居るんじゃ無いかって、朋少し興味を示したでしょ、だから皆安心してたのに」

　僕の周りの女子がウンウンと頷く、いやそりゃ興味はあるよ、僕だって男だし

「と、朋君!　誰と付き合ってるの!　この学校の人?」

「いや……えっと……」

　僕は一瞬天音の事を言おうと思った、でも言えない、妹と……中学生と付き合ってるなんて……言えない……

「誰なの?　ねえ誰?」

女子数人に凄まれる、いや……えっと……

「はーーーーい、皆席に着いて～～」

　教室に担任が入って来る、いつの間にかチャイムがなっていたらしい……助かった……皆残念そうにゾロゾロと席に戻る。

「朋……後で教えてよね……」

　そう言って縁も席に戻って行った……あああ、マジか……

　天音と付き合ってまさかこんな事になるとは思いもしなかったと同時に、天音の事を隠さなければいけないっていう思いもしなかった事に僕は今後どうすればいいのか……さしあたって今日の休み時間と放課後をどうするか焦っていた。