第2話彼女との出会いは良かったのか悪かったのか僕にはわからない

 またあの夢を見た。

 夢の内容は父との辛かった時のピアノ練習、 コンクールでのミスタッチそして周囲からの失望の視線これらの嫌な記憶が、リピートで続く夢だ…。


 今日からまた学校が始まると言うのに、嫌な夢を見てしまい、朝から気分は最悪だった。


 だいたい高校は4月になればクラス替えがある。当然僕の学校もそうだ。クラス替えの発表の紙は下駄箱前に貼ってあり、それを見て一階の3-Aの教室に入った。

 ちなみに僕はそれほどクラス替えに興味がない。なぜなら友達がいないからだ。

 僕は小学校の頃からピアノづけだったので友達の作り方を知らず結局今まで友達と呼べる人はできなかった。

 クラス替えをした僕のクラスはとても賑やかで喜んでいる者もいれば、僕のように一人でいるものもいた。

 少したち担任の先生が来た。担任の先生は体育の先生で肌が黒くガタイが良い大きな男の先生で、校内でも厳しいと有名な先生だった。

「担任の山川だ、1年間よろしく」たくましい声でそれでいて威圧のある声だ。

「あーじゃあ、早速だが学級委員を決めたいと思う男女1名ずつやりたい奴は手を上げろ」と山川先生は言った。

 まぁ僕にはそんな目立つ役目などできないので、手を挙げなかった。5分ぐらいたち、ある女の子が手を挙げた。

「誰もいないなら私がやります。みんなに迷惑かけちゃうかもだけど頑張ります!」

 その女の子はスクールカースト(学内ヒエラルキー)の頂点に位置する才色兼備で学校のアイドルの早川凪だった。

 目はぱっちりしていて二重で髪は黒髪ロングヘア、そこらへんのアイドルよりも可愛いと学校の男子が言っているのを聴いたことがある。実際僕から見ても可愛いし、性格も誰にでも優しく勉強もできる。彼女は僕が昔憧れていた父のような特別な人間だった。


 そのあと男子の方はサッカー部の男子になり、他の委員会も学級委員二人を中心に決めていった。僕はとりあえず誰にも人気の無い美化委員というたまに放課後の掃除がある少しめんどくさい委員会に入った。

 それでその日の学校は終わった。僕は部活に入っていないのでまっすぐ家に帰る。僕が通っている学校は自転車で15分で着く割と近い学校だ。家に帰り、「ただいま」と母に言い自分の部屋に向かう途中ピアノの音が聞こえた。妹の美菜が弾いているのだろう、とても聴いていて心地の良い音が部屋越しから聞こえてくる。彼女も僕とは違い特別な人間だ。

 特に気にしないで自分の部屋に向かった。


 1学期が本格的に始まり、クラスでのグループが決まっている中、僕は当然一人ぼっちでいた。

 お昼は1年の時から、一人で屋上の前のドアの前で誰にもバレないように食事をしている。

 食事が終わり、教室に戻る途中、男子女子複数の混合グループを見た。

 とても楽しそうで、いかにもあれが高校生の青春だと僕は思った。

 その中には早川さんもいた。当然僕には声をかけることもできず、遠い存在だなと思いながらその場から離れた。


その日に僕は担任の山川に、音楽室の掃除をしてほしいと頼まれてしまった。

正直やりたくなかったが、山川は体育の先生で僕は体育が苦手だったのでここで断って評価を落としたくなかったので断ることができなかった。

音楽室の掃除も15分ぐらいであらかた終わったので山川に報告して帰ろうとしたが、久しぶりにピアノを弾いてみようかなとふと思った。

誰も近くにいないことを確認して弾くことにした。

久しぶりに弾くとやはりブランクを感じる。

けどとても楽しかった。

自分で音を奏でて自分だけの世界に入るそれがとても気持ちよかった。

気がつけば30分以上も弾いてしまっていた。

帰ろうとした時、廊下で逃げるように足音が聞こえた。

誰かに聞かれていたのだろうか…

まぁ姿は見られてないし、問題ないだろうと気にしなかった。



 新しいクラスになり1ヶ月が経つ頃に美化委員の仕事で放課後教室の掃除が《《》》あると担任の山川から言われた。

 もう一人の美化委員の女子の名前は覚えていないが美化委員の仕事の教室の居残り掃除にはいなかった。仕方なく一人で掃除した。

 それから30分後に終わり帰ろうとして廊下にでて、前から走って来た女子とぶつかった。僕とその女子はどちらも後ろに倒れ込んだ。「いててて」女子は手首をひねったのか手首を抑えていた。

 どう考えても前から走って来た女子が悪いが一応謝った。「ごめん前見てなかった」そう言ってその場から立ち去ろうとしたがその女子に制服の裾を掴まれた。

 その女の子の髪型はあんまり詳しくわないがボブという髪型で茶髪、目はぱっちりしていて身長は僕とおんなじくらい、

 そしていつか見た早川凪がいたグループの中の一人で僕も良く知っている人だった。

 同世代天才ピアニスト水野あかりだった。

 そしてその水野あかりが驚くべきことを言った。

「じゃあ私の代わりにピアノのコンクールに出て!!」


「はい?」



 これが僕と同じ美化委員、そして僕の人生を変える厄介者、天才ピアニスト水野あかりとの出会いだった。

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