第4話 オタクの拘り

ソムリエ「『おっぱいに貴賎なし』という様におっぱいは大きくても小さくても素晴らしいことなのよ!!」


とあるファミレスに置いて高らかとそう言う眼鏡を掛けた女性の対岸の席に座っていたボクは一瞬ではあるが他人の振りを敢行しかけていた。

彼女はボクとヨメの共通の知人であるイラストレーターでイベントなどにおいても

色々と世話になっている業界においての先輩と呼べるだ。

そんな彼女から今度の同人即売会においての打ち合わせの為にとこのファミレスにやってきていたのだが


ボク「うーん、帰っていいかな?」


ドリンクバーの注文を行い、飲み物を取ってきて打ち合わせを始めようとした矢先に

先述の発言を聞いて正直な所、恥ずかしくなった。

時間帯的にそんなに客はいなかったとはいえ、何事かとこっちに視線を向けられているのを見ると恥ずかしくて憤死したい気分だ。


ソムリエ「何よーノリ悪いわね~普段ならSNSでもこっちがドン引くぐらい食いついてくるのにさ」

ボク「それはTPOを弁えた上でだよ…あと幾ら店長と顔見知りとはいえ、もうちょっと周りの眼ぐらいは気にするべきだよ」


持ってきたコーラを飲みながら一息つくボクに彼女も続いてコーラを飲む。

なおヨメは所用で後から来ることになっているのだが…正直ボク一人では彼女へのツッコミを処理できない


ソムリエ「だってさー、SNS以外じゃ趣味やら拘りやらを腹を割って話せる人がいないじゃん」

ボク「キミを見てると女性でも色んな人がいるんだなって改めて思ったよ」

ソムリエ「え、なに?褒められたの?」

ボク「褒めてない!!」


このままじゃ埒が明かないと思ったボクはとりあえずケーキを注文することにし、彼女もそれに続いた。


彼女は簡単に言えば“おっぱいマニア”だ。

彼女の描く絵はおっぱいを強調したシチュエーションの絵が多い。

誤解のないように言っておくと別にR-18指定の絵を描いている訳ではない。

彼女には時折、自分の小説作品の絵を描いて貰ったりしてくれた。


ボク(なお当人は自分の胸のことを言うとネタにするけどもかなり乱暴に扱われるので弄る場合は覚悟するべし)

ソムリエ「なんか言った?」


いいや、と首を横に振りながら彼女と他愛ない会話を繰り返していると遅れてきたヨメが店に入ってきた。


ヨメ「ごめん、遅くなっちゃった!!」

ソムリエ「いいよ、いいよ。これが盛り上がる所だし。あ、あとで揉ませて?」

ボク「何をさらりと他人の妻にセクハラかまそうとしているのかね?」


ボクの白い視線に目を晒すマニアの彼女を尻目にヨメはボクの隣に座る。


ヨメ「というかどうしたの?なんか凄く疲れてる表情してるけど?」

ボク「さっきからボクの目の前の人が変態的ムーブを全開でそれに対処して疲れてね…」


そう言うと同時にボクは頭を突っ伏す様に机に乗せる。

それを見たヨメは「よしよし、頑張ったね」と言いながら背中を軽く叩く。

そんな様子をケーキを頬張りながらマニアの彼女は渇望とも取れる様な視線で見ていた。


ボク「キミに浮いた話がないのはそのオヤジキャラが原因だと思うんですけどね」


ボクの言葉をスルーするというか気づいていない様子で彼女はヨメの胸を凝視していた。

視線に気づき若干戸惑うかの様に身体をよじり始めるヨメ。


ソムリエ「やっぱアンタの胸はいいわね~巨乳は正義よ!!」


直後、顔を真っ赤にしたヨメのチョップが彼女の頭に炸裂した。


ソムリエ「うう、アンタもおっぱい教徒じゃないの~」

ヨメ「だからって自分の胸を公衆の面々で褒められても嬉しくないわよ!2次元だけよそういうことができるの!!」


うむ、色々と迷走し出した。

けどボクはヨメの胸が大きいのはいいと胸中で思った。

特にシャツの胸ポケットが巨乳の圧で張り出しているのが何よりもいいと思ったのだがそのことが顔に出ていたらしくヨメから無言の圧力を受けて即座に縮こまった。


ヨメ「…というか今日は打ち合わせのはずなのになんでこうなるのよ」

ソムリエ「そりゃあおっぱいは最高にして至高だからよ!!」

ボク「そうだね、でも残念だけどヨメはボクのヨメだからね、キミには渡さないよ!!」


そう言いながらボクはヨメの身体をガシッと抱えるようにした(なおヨメはさっきよりも顔を真っ赤にして「あうあう」と声を出していた)

結局こんなことの繰り返しで今日は何も進まず、その後、他の友人たちとSNSでやり取りしながら打ち合わせを行うことになった。

…だが彼女の言葉には同意できることもあったのはボクだけの秘密だ

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