第2話 オタクの趣味と実益


多分趣味を持つというのはオタクの第一歩なのかもしれないとダンナは心の中で述懐する。

趣味を実益に伴うというのは難しいかもしれないが今の時代ならその気になれば

仕事にできるのも難しくないかもしれない。

そういった意味ではオタクというのはある意味で“仕事を作る”のが上手いのではなかろうか

「とは思ってもやっぱそれをカタチにするのはやっぱ難しいな~」

思ってることと言ってることが矛盾してないかと何度も自問自答したこともあるが

これも自分の考え方なんだなと勝手に自己解決も一体何度目か、と苦笑すると

いつもどおり気分転換するべくリビングへと足を向けた。


リビングではヨメがテレビを占拠しゲームをプレイしていた。

ヨメのプレイしているゲーム機は最新のもので従来の様にテレビに出力する機能の他に

ゲーム機本体を携帯ゲーム機の様に持ち運びできるというある意味では

夢がカタチとなって実現したものとひとりで勝手に納得していたのかうんうん、と首を動かしていた。

視線と声が漏れてたのか、ボクの存在に気づいたヨメがゲームを中断して振り向いてきた。

「ん、どったの?」


「趣味と実益の両立、ねぇ…」

休憩を兼ねてダンナの悩みに付き合うヨメは菓子箱の中のクッキーを一摘みし、口に入れる。

以前にも話したがヨメの仕事はイラストレーター。

仕事でゲームのファンアートなども描いている彼女ならボクの悩みも理解して貰える

「うーん、別にたいして考えたことなかったわね」

―――ええ…

一瞬だが自分の思考が真っ白になりかけたけどもどうしてと聞いてみた。

「どうしてと言われると元々絵を描くのは好きだし、大学も絵のレパートリーを増やす為にって感じだったからな~」

その後、大学のサークルで同人誌を出し、投稿サイトなどで絵を上げていた所、各所から依頼が

ちょくちょく来るようになって今に至るとのことらしい。

―――なんというか変に考えてた自分がバカらしく思えると同時にそれもそうだよなと妙に納得した。

元々仕事なんて自分が好きだからこそ仕事としてカタチになっているのだから自然に仕事へと繋がるのも当然。

むしろ“好きでもない”のに仕事を続けるのは正直苦しくて当たり前だとボクは思った。


会社に勤めてた時はただ給料の為とばかり思ってたけどもやっぱそれだけでも限界は来る。

だからこそボクはこの道に来たんだ、辛いことよりも楽しくやっていきたいからこそこの道を選んだんだと

「なんか色々と考えてるみたいだけども下手に考えても坩堝に堕ちるだけよ?」

こっちの考えを察したのかヨメはそうボクに答えた。

「…キミには敵わないな~」

「そう思うのならちょっと一緒にプレイしようよ」

「いいのかい?レースゲーはボク結構強いよ?」

「フッフッフ、対戦系でもアタシの強さを見せて上げますよ~」


休憩から一気にプチゲームパーティへと移行したが良い気分転換となったのかその後の作業は非常にスムーズだった。

趣味あればこそ仕事へと繋がるのだろうとなんとなく実感した1日となった。

なお、勝負はボクが負けました。

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