第15話 天空族と龍神族

 天空族――


 ツバサはその名を黎明樹の精霊シルキーから聞いていた。

 彼女は天空族は魔族よりも危険だと言っていた。

 そして案の定。

 天空族はちょっとした時空の歪みを感知して、ツバサに襲いかかってきた。


「よく解らないけれど、魔族はそこまでしないよな?」


「はい、魔族は破壊や戦闘に特化した種族です。支配しようとはしますが、監視はしていないはずです」


「天空族はこの世界を管理したいということ?」


「そうです。そのためには監視が必要になります」


「天空族とは、俺が知っている魔族とはだいぶ違うようだね。教えてくれクラウ」


 天空族の行動原理はこの世界を支配することだ。その言葉だけとると魔族と一緒である。

 しかし、彼らの支配は管理することが前提にある。

 彼らは彼らの秩序を乱す行為を嫌う。故に世界を監視している。


 ところが、天空族の秩序を乱すはずの魔族とは、なぜか全面戦争にはならない。

 その理由はクラウも知らないそうだが、力が拮抗しているのではないかと予想している。


 そして、天空族の厄介なのは、空に浮かぶ大陸――浮遊大陸――から世界を監視しているところにある。

 普段は人間界にさほど介入してこないが、異質なことが起こるとすぐに現れて、その原因を取り除く……。

 まるでミストガルの管理人のように。


 ツバサは今回、身をもって天空族の監視力を体験したわけだ。


この世界ミストガルには三大種族と呼ばれている強力な種族がいます。その一つが天空族です」


「もう一つは魔族だよね?」


「ええ、そうです。そして龍神族がいます。おそらく、本気で戦えば龍神族が一番強いでしょう」


「本気で戦えば? というと本気を出したことがない?」


「いえ、暗黒大陸から外に出てこないので、全面戦争にはならないのです。歴史的には龍神族と一対一で戦闘になり、勝ったことのある種族はいないはずです」


「暗黒大陸にいるのか……。ここを脱出するまで、見つからなければいいな」


「はい、まったくです」


 しかし、ツバサは天空族に見つかっている。龍神族に見つからないという保証はなにもない。しかも、ここは龍神族のお膝元なのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る