第22話

「あんたの家に……泊まるしかないじゃない…」



 普通に考えれば衝撃的な発言だが、俺はそんなに驚かなかった。


 なぜならばだいたい予想はついていたからである。


 俺以外の人間が誰も彼女の事を覚えていない時点で、いくら彼女が友達が多くて顔が広かったとしても、今となっては何の役にも立たない事は火を見るよりも明らかである。


 友達の家に泊まれないとなれば、ホテルはどうだろうか?


 少し想像をしてみたが、受付で彼女の容姿から小学生扱いされて相手にされないのがオチだろう。


 ならば、野宿?


 そんなことは俺が許さない。


 その以前に、お嬢様である凛にはそんな発想そもそもなかったのかもしれない。


 つまるところ、彼女は消去法的に、どんなに嫌がっても俺の家で大人しく世話になるしかないということだ。


 そう、これは必然なのである。別に喜んでないからな。



「泊めることは大いに構わないのだが……少し問題があるな…」


「何よ?」


「ちょっと想像したらわかると思うが、今まで彼女とかいなかった俺が、いきなり家に女の子を泊めだしたら、さすがの我が妹でも怪しまれるんじゃないかな?」


「妹さんにもこの事を話せばいいじゃない。彼女だったらきっと分かってくれるわよ」


「どうだろうな。客観的に見たら、『小学生の女の子を急に家に連れ込んで変なことを言うヤバい奴』だからな……」


「……。さらっと『小学生』って言ったわね…」


 凛は毎回の事ながら、少しムッとする。怒っている様子も相変わらず可愛い。



「ま、まあ、というわけだから、この件はあえて妹には話さないでいようと思うのだが、どうだろう?」



「知らないわよ。そんなこと。あんたが勝手に決めればいいじゃない」


 なんかいつも以上にツンツンしている。そんな彼女ももちろん可愛い。



 というわけで、俺らはごく自然な流れで同居することになった。


 しかも妹には秘密で。


 これが後に大きな過ちとなることは、初めての同棲(?)に浮かれていた俺はこれっぽっちも考えていなかった。



 というか、考えられなかった。物理的に。


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