第二走 うれしはずかし朝走り

 こうして毎朝六時に走るのが習慣になった私でした。


 毎朝同じ時間に同じところを通っていると必ず同じ習慣の人に会うものです。通勤電車やバスでも毎朝見かける人っていますよね。


 私にもそんな仲間が出来ました。ソーイチローさんです。彼は懐中電灯を持って毎朝犬を散歩していました。私が勝手にソーイチローさんと呼んでいた彼ですが、それはただ彼の犬が某漫画の主人公の飼い犬に似ていたからです。


 ただ会釈する間柄でしたけど、毎朝早くから寒いのにあなたもお疲れ様ですねえという連帯感が私たちの間には生まれました。でも、もし彼が違う犬を散歩していたら私は別の人だと思ったでしょう。すみません、連帯感と言ってもその程度でした。


 真冬のジョギングはウォームアップ、防寒、水分補給など気を付ける点がいくつかあります。路面の状態に注意することも大事です。


 ある朝、事故は起こってしまいました。家から二キロほど離れた某ファーストフード店前の角を曲がろうとして氷の上でツルっと滑り派手に転んでしまったのです。膝を激しく打ち、うぇーんと泣いてしまいました。


 携帯電話は持っていましたがまだ朝の六時半です。夜型のツレアイはぐっすり寝ています。起こすのも悪いし、迎えに来てもらうのを待っている間に氷像になってしまいそうな寒さです。


 そこから歩いて帰ることにしました。しかし、歩いていると厳しい寒さで体がすぐに冷えてしまいますし、走るよりも時間がかかります。結局泣き泣き足の痛みをこらえながら小走りで帰りました。


 この現代は訴訟社会ですから、あのファーストフード店を店舗前の歩道整備がなっとらーん、と訴えることもできたでしょう。幸い怪我は大したこともなく、防寒ズボンの膝の部分が破れただけでした。これなら裁判に持ち込む方が面倒です。受験シーズンだったので私が受験生の皆さんの身代わりに滑ったということにしておきます。


 その頃には家族にも私は走り始めたことをついにカミングアウト致しました。


「そこの角のケン〇ッ〇ーの前でさっき転んで膝が痛いよー」


と朝七時前に泣き泣き帰宅したのでばれてしまったのもありますが、とりあえず一か月以上は続けられたからです。


 真冬の早朝ジョギングも三か月も続けていれば板についてきて、少し距離も伸びました。雪や氷にも少し耐性ができました。




***次回予告***

私ヨカコは何と5キロ走大会に参加します。

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