第21話

「僕も、そう思いました」


「そう。一緒だな」


そう返すと、旭は嬉しそうに微笑んだ。

初めて会った時のあの下手くそな笑顔を思い出す。

お前、こんな一言くらいで、そんなに嬉しそうにするなよ。

心臓が変な風に拍動し、その勢いのまま少し屈んで彼の額に口付けた。


「風呂、まだ入ってないだろ。俺は気にしないけど、旭が恥ずかしいなら、時間かけて洗っておいで」


「え」


「それでその気があるなら、風呂上りにまた部屋においで」 


服越しに旭の胸の上に手を置く。

解りやすくそこは強く脈打っていた。


「え、あ、風呂、入ってきます」


花火を見るのに電気は消していたのに、その薄暗がりの中でも、旭の顔が真っ赤になっているのが解る。

ぎこちない動きで彼が部屋を出て行った。

恥ずかしがりながらも、どこか期待している表情だった。


実際時間をかけていたのか、迷っていたのか、一時間くらい経ってからおずおずと旭が部屋に入って来た。


「遠いよ。もっとこっちおいで」


入り口で突っ立ったままの旭を手招くと、視線を伏したまま近付いて来た。

その手首を引いて布団に仰向けに寝転がせる。

恥ずかしいのか、泣きそうな顔になっていた。


「嫌だ? やっぱりやめる?」


彼の身体をまたいで上から訊くと、旭は首を小さく横に振った。


「したいです」


「そう」


顔を近付け、震えている口唇に舌を這わせてそのままキスをする。

キスには少し慣れたのか、つたないながらも一生懸命応えるのがいじらしい。


「うつぶせになって腰上げて。ちょっと冷たいよ」


パンツと下着をするすると下ろしてそこら辺に放り投げる。ついでに万歳をさせてTシャツも投げた。

大人になり切らない成長途中の身体は柔らかさとしなやかさを兼ね備えていて、しっとりとした太腿の内側を撫で上げると、旭はびくびくと震えた。

用意していたジェルを手に取り、手の平で馴染ませてから彼のすぼまりに塗り込む。

何度か入り口をなぞってから中指を挿し込むと、しかし意外にすんなりと飲み込んだ。


「旭、ここいじってた?」


言葉にはしなかったが、彼は身体をぎゅっと縮こませた。その反応が答えのようなものだった。


「何考えながらしてたの? 俺にして欲しかった?」


抜いては挿してを繰り返し、充分柔らかくなると本数を増やした。

彼の腰が揺れ始め、堪えきれないように口から声が漏れる。


「あっ、ぁぁあ、はっ」


もうべとべとになっている彼の前に手を伸ばし上下にしごくと、快感から逃れるように腰が退けて、その分後ろの指の挿入が深くなる。

丹念にほぐし、指は三本に増えていた。


「あ、あ、ぃや、いや、いおりさん、伊織さん」


「声ちょっと低くなったのに、喘ぎ声は高いままなんだな」


「え、あっ、んん、ん」


旭はぐずぐずと泣き出し、自分の手の平で口元をおさえた。

そろそろ出そうだという時に、指を引き抜いてしごいていた手も止めた。

閉じきらないアナルの入り口が、呼吸に合わせるようにひくひくと蠢いている。


「嫌だなんて言ってないだろ。声出して良いよ」


手首を取り、旭の口から外させる。


「ぁっ、あ、ぃきたい」


「前が良い? それとも後ろが良い?」


「っわか、わかんない。伊織さ」


「どっちが良いの。……こら、触っちゃだめだよ」


自分のペニスに伸ばそうとした右手を捕らえる。

濡れた瞳が俺を見つめて「両方」と小さく呟いた。

下着を脱ぎ、完全とは言わずとも勃ち上がっていたペニスを取り出して少年の尻の谷間に擦り付ける。

気付いた旭が少し逃げようとしたから腰を掴んで引き留めた。


「あぁあ、あ」


ぬくりと先端をゆっくり挿し込む。

熱い肉壁を割り進め、根本近くまでおさめると、旭が喉を反らして悲鳴のような擦れた声を漏らした。

彼の身体の中が俺の形に作られる。馴染むまで少し時間を置いてから、腰を前後に動かした。


「気持ち良い所解る? 好きに動かして良いよ」


旭が身を捩り、呼吸を荒くしながら頬を布団に擦り付ける。

探るように向きを変えて挿入を繰り返す。

ここだという所を一瞬掠めた時、旭が肩をびくりとさせて一際大きく喘いだ。


「んんっ! んあ、あ」


「ここ?」


旭が何度も頷く。

気持ち良い所だけ狙って突き上げ、また前にも手を伸ばして弄ると、限界まで来ていた彼はすぐに射精した。それに合わせるようにアナルがきゅっと締められ、俺も彼の中に吐き出す。

旭が鼻にかかる声で何度も吐息を漏らした。


荒い息を吐きながらペニスを引き抜く。

力が抜けて布団に身体を預けている少年の綺麗な背筋に指を這わせた。

わざと音が出るように腰から背骨を通って口付け、肩に噛み付く。


「もう一回出来る? もっとしたい?」


耳元で囁くと、彼は「したい。もっと欲しい」とうわ言のように口にした。

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