氷上のローレライ

 シャルルの発動。

 C-25-L『薄氷湖』

 戦闘エリアを薄い氷の張る湖の上に変更する。


 全面に薄い氷の張った巨大な湖。その真ん中でシャルルはしっかりと相手を見据える。対峙する少女の名前はキコ。氷の下には無限の極寒が広がっており、もしも落ちれば長くは持たない。

 それを理解しているキコは氷の上で1歩も動かなかったが、当然シャルルは落とす為の能力を用意している。


 シャルルの発動。

 H-05-V『グラヴィジョン』

 視界に捉えた生物や物の重さを倍にする。


 この能力により、キコの体重が倍になった。突然の加重に氷へとヒビが入る。


 キコの発動

 C-02-L『海帰』

 戦闘エリアを大海原に変更する。


 C-L系能力の重ねがけ。戦闘エリアを変更する能力が2つ発動した場合、結果として環境は両方の特徴を持つ事になる。


 まずは氷の厚さが盛り上がる。そして氷同士が割れて直径2〜5Mのばらつきのある塊に分かれ、散り散りになった。氷の下の水は塩分が混ざった海水になり、若干ではあるが『薄氷湖』単体の時より水温も上がる。


 氷が分厚くなった事により、キコは水中への落下を免れた。だが体重自体は重くなったままの為、身動きは難しい。特に氷と氷の間を飛び跳ねて移動するなどという事はほとんど出来そうになく、もしも2度目の『グラヴィジョン』が決まれば、その重さは氷ごとキコを沈めるだろう。


 この追い詰められた状況下で、キコが取った行動は「歌う」事だった。


 キコの発動。

 H-07-F『スクリーム』

 口から大声を出し、相手の耳を通して脳にダメ-ジを与える。


 キコの発する声は人の意識を飛ばす。それは例え歌であっても効果を発揮し、シャルルの耳を襲った。咄嗟に両耳を塞ぐが、流氷の上で孤立している事はシャルルも同じ。ならばとシャルルはメンターの指示通り、キコを水の中に落とす事を優先する。


 シャルルの発動

 A-20-I『痛石』

 命中すると激痛を与える石を召喚する。


 召喚した石をキコに向かって投げつける。だが手を離すとキコの『スクリーム』をもろに聞いてしまう。それでもなお痛石を2秒間隔で投げつけるシャルル。当たった部位に猛烈な痛みが走り、キコは苦悶の表情を浮かべた。重さ、地形、避ける事は難しい。


 耐えきれず、キコは身体を転がすようにして自ら極寒の海水へと沈んだ。それを確認し、シャルルは距離を詰める。確実な勝利の為、水に落ちた相手に対して更に『痛石』を沈めてトドメを刺す為だ。氷と氷の間をジャンプして渡る。水中に落ちた事によりキコの歌はサビの部分で中断されている。


 あとはキコが氷の間から顔を出せば、それに石を投げつけるだけで勝てる。


 だが、キコは思わぬ方法で戦線に復帰する。


 キコの発動

 A-16-R『清水』

 手から無限に水を放出する。


 キコの両手から物凄い勢いで発射された水が、キコの身体を押し上げる。流氷の上で背後を取られたシャルルが振り向くと、そこには大きく口を開けたキコの姿あった。

 至近距離でキコの歌の続きを聞いたシャルルの意識は一気に吹っ飛び、氷と氷の割れ目に落ちて沈んだ。



 決着。

 キコの勝利。



 参加メンター

 キコ 岩道節羅様

 シャルル 鷹宮センジ様


 感想

 本部から分離して初の試合です。同時に初めてのC-L系重ねがけでもあります。使用能力は珍しいのが多かったですが、展開としてはシンプルになりました。特に『清水』対『痛石』だと、通常受けずに水で石を弾くという事が出来るのですが、今回は指示で噴射を活かして海上移動というのがあったのでそちらを優先して逆転の展開にしました。一方でシャルル側はロジカルな攻めが魅力的でしたが、守りの部分では能力の相性を突かれてしまいました。

 ご参加ありがとうございました。またよろしくお願いします。

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