12話 粒子ドライバー・トロン Aパート

 試作しさくギアにあったのは、誰かのために戦う力。

 設計者のアキラが求めたのは、過酷かこく環境かんきょうで、誰かを救うこと。力を悪用させないための制限でもある。

「それを改良して、自分のために戦う力にした」

 廃工場はいこうじょうの中。エイスケが戦いながら話す。

 データ収集と改良には時間がかかった。戦いながら分かりにくい説明をして、少年を惑わせる。

 家族のために戦ったサブロウが勝てないのも当然のこと。改良ギアは、自分のためだけの力に改造されていたからだ。

 エイスケが変身した白いギアロードは、ソーグとデトンの力を使える。磁石のような強い相互作用そうごさようが振るわれた。ゲミオンが、工場内の鉄骨を飛ばす。

 ジュンヤが変身した青い粒子りゅうしドライバーは、ペジとシグスの力を使える。質量しつりょうを与えて鉄骨をその場に落とした。成人男性のように見えるトロンが、構える。

「自分のためだけに力を使って、どうしようっていうんだ」

 トロンの反撃は、白い防具に当たる。流れる水のようにらされた。

「ゆくゆくは、ガキどもを操って世界を壊す」

 ジュンヤには理解できない。何を言っているのかも分からないし、分かりたいとも思えない。

「誰だって昔は、子供じゃないか」

「世界には価値がない。なかでも、人間は最も不要なもの」

 青い姿のジュンヤが攻撃を受ける。白い姿のエイスケは、肉弾戦にくだんせんをいどんできた。

「ふざけるな!」

「全ては、俺の実験材料だ。堕落だらくした世の中を、秩序ちつじょある物にしてやる」

「そんなことはさせない!」

 トロンの力で防いで、パンチを返す。ゲミオンの力でエネルギーが受け止められ、さらに返される。青い防具に当たった。

「ヒーローはいらない。甘ったれた小僧こぞうは!」

 吹き飛ばされた青い男は、すぐに立ち上がった。ジュンヤがエイスケを否定する。

「誰かの趣味を認めないやつは、自分の趣味を楽しんじゃいけないんだ」

 言葉をつづける。言うべきことは、もう決まっていた。

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