7話 答えを求めて Aパート

「やっぱり、おかしい」

 シートベルトを装着そうちゃくした少年が、運転手に話しかけた。

「どうかした? ジュンヤくん」

 ツバキは、長い髪をうしろで結んでいる。服は白い。シートベルトが押さえているのは、いつものスーツではなく空手着。見る者に妙な違和感を与える。

「黒い怪人かいじんが、いっぱい出てこない」

「え? えーっと。私に言われても」

 表情を曇らせたツバキ。苦笑いをするばかり。

幹部かんぶ鳥怪人とりかいじんは?」

雷古院らいこいんさんに聞いて」

 歯切れの悪い女性が黙ってしまった。少年が身体からだを動かし、柔らかそうな服がごそごそと音を立てた。スマートフォンのような装置をいじり、通話を開始する。

『全部、上からの指示さ。知っていることは少ない』

 エイスケが言った。ジュンヤの眉に力が入る。まだ、少年は質問していない。

「あの黒いやつは、なんなんだよ」

なぞ組織そしきが何をたくらんでいるか分からない。慎重しんちょうに行動したまえ』

 ジュンヤは、ペジ・タイプジーを思い出していた。黒いソーグのような姿を。チップを使って灰色に変わったことを。シグスの力を。

 メタリックな灰色の自動車が止まった。二人が降りる。

 建物の中。白い大きなドアが開く。

 ひろい部屋の中で、ソーグに変身へんしんするジュンヤ。

 空手着のツバキが構えた。同じように動くべく、真似するソーグ。なかなか、うまくいかない。白と赤が身体からだを動かす。

 怪人かいじんに対抗するための特訓とっくんがつづく。

 べつの部屋で、エイスケは暇そうにしていた。解説することがないためだ。

 二人が礼を言った。変身へんしん解除かいじょされる。

 ジュンヤが、建物の外に出た。夕暮れにはまだ早い。少年の表情は晴れないまま、その場をあとにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る