第4話 どうやったら、姫川さんと仲良くなれるんだろうか。

 どうやったら、姫川さんと仲良くなれるんだろうか。


 そもそも、話しかけるきっかけがないんだよな。


 俺と姫川さんでは、接点がなさすぎるんだよな。


 あれからまったく進展していないもんな。


 気か付くとノートにおっぱいの絵を描いていた。


 しかも解説文付きだ。


 もう一度、あのおっぱいに触ってみたいな。


 おっぱいのことを考えていると、辺りが騒がしくなり、俺は慌てて『ノート』を机の中に押し込んだ。


 雑談を重ねていたクラスメイトの視線が、教室の後ろのドアに集中する。


「マジ姫川さんって、下手なグラドルよりもカワイイよな」


 熱い憧憬と崇拝の視線。


 彼女はその視線の雨にまったく動じることもなく。


 美しい金色の髪を靡かせ。


 完璧な微笑みを浮かべて。


 教室に入ってきた。


 彼女は鞄をいったん床に置き。


 制服のスカートを軽くつまみ、かすかに身体を屈めて


「皆様、おはようございます」


 落ち着き払った品の良い声ともに、造形が整いすぎて冷たい印象さえ与える驕慢きょうまんな美貌が、とたんに親しみやすいものに変わり。


 そのわずかな身動きに連動し、腰まで伸びた金髪がさらさらと衣擦れのような音を奏でながら彼女の背中を撫でた。


 眉の上できっちりとそろえられた前髪も上品で、少しの手入れでも十分見栄えのする細い眉は髪質と同じく柔らかに震え、そのすぐに下には赤いピアスをつけた丸く小さな耳があった。


 そして小さめな耳たぶは、やわらかそうな感じでとてもキュートだ。

 

 頬にもほとんど触れないように計算し尽くされ、カットされた金の絹糸は陶器のような白い肌によく映え、一個の芸術品のような印象を抱かせる。


 そして何よりも立ち姿が、落ち着いた声が、言葉遣いがっ!? 


 一礼したあとの笑顔が気品に満ちていた。


 あくまでも控え目で、必要以上に目立つような行動は取らない。 


 あと同年代の女子が周りにたくさんいるだけに、その抜きん出た『ファッションセンス』の良さが際立って見えた。


 丸みを帯びた細い可憐な肩のラインに、胸元を飾る大きなリボンタイ。


 清楚系ブレザーの下に着こんだ薄手のカーディガンは、優美さと可憐さを強め春の主役であるパステルカラーが、明るい彼女にはとても似合っていた。


 折り返しになった袖口の先から、ほんの少しだけ白い指先が出ている。


 桜色のカーディガンは、やや胸元が強調されるデザインになっていて歩くたびに揺れる胸は、校則違反としか思えないほど短くした膝上30cmに迫るスカートと黒ニーハイの間から見える『絶対領域』は、まぶしいほど白くて。


 ミニスカートの中から白く張りのあるカモシカの脚のようなピチピチの太ももが露わになり、今にも『下着』が見えそうで、それでいて見えない『鉄壁のスカート』を見つめ、ゴクリッと喉を鳴らしてしまう。


 学校指定の上履きのゴムは、1学年を表す緑色だ。


 非の打ち所がない完成されたコーディネートに思えるが、赤いピアスや大胆な衣装を身につけているその姿は『背伸び』をしている感があった。


「今日も美しいわね」


「お姉サマ~~~。私と結婚してください」 


 そう叫ぶ女子生徒たちは夢見るような表情で、ぼーっと胸の前で両手を握りしめていた。


 心ここにあらずと言った感じの『フワフワ』した状態だ。


 姫川さんは、最高の営業スマイルを浮かべて、そんな女子生徒に向かって手を振り。


「お、俺、姫川さんと目が合った」


 目をハートにさせた男子生徒にも優しく微笑みかけてきた時、一瞬。


 目が合ったような気がしたが、気のせいだよな。


 だって目が合ったということは、姫川さんも俺を見てたということで、あの姫川さんが俺なんかに微笑みかけてくれる、わけないもんな。


 とほほ。  


「コラ、男子。目がイヤらしいぞ」


 どうやら女子たちは、姫川さんを男の毒牙から守るという意識があるみたいだな。


 女は……コワイ……女は……コワイ……女は……コワイ……。


 特に集団化した女性は、何よりも恐ろしい。


 女子たちが侮蔑を含んだもの凄い形相で男子を睨む、と男子たちも負けずに凄い形相で女子たちを睨み返した。


「うっせぇ、ブス」


 身の毛がよだつような、イヤらしい視線を姫川さんに向けながら


「それにしてもエロいカラダしてるよな。見てるだけで、ムラムラしてくるもんな」


 少しだけ怒りを覚えた。


 コロコロと態度を変えるうえに、姫川さんをエロい目で見るなんて、失礼極まりない奴だな。


 あの『芸術的』な美しさが、穢れなき美しさが、わからないのか?


 愚かしいにもほどがあるな。


 まさに高根の花で、俺にとっての『ヴィーナス』だ。



 

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