第19話地下室の秘密

余興にもならぬ遊びに興じるおまえの声を奪い去って、私の蒐集している陶器の猫に授けられれば、あるいは幾分か無聊もなぐさめられようが、あいにくと私にはおまえの声が厭わしい。厭わしいのにいとおしい。猫なで声で私の機嫌を取り、その舌で私のヒールを舐めすさぶおまえは猫にもなれぬけだもので、時代に反逆する私たちに未来などない。平等を説いて早数世紀になる地球儀を足蹴にし、幾多も床に転がる人形の愛玩物として鳥籠に入れておくとしよう。さておまえの望みはなんだったか、よもや地上の光をふたたび崇めることではあるまい。おまえの胸中に額装されている油彩画のモデルが私ではなく、私の母であることをおまえはけっして語らない。


第六十二回Twitter300字SS お題「余り」

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