第2話たましいのふるさと

ええ、あなたさまをお待ちしておりましたのは、間違いなくこの私でございます。たましいのふるさとにそぼ降る雨もうつくしいものでございましょう。したたる雨のひとしずくをひとつひとつ集めて編んだこの打掛も、月の光を受ければ銀にかがやきます。さあ、今宵は何をお聞かせいたしましょう。雪女の憂い顔、蛇女の赤い舌、しょうけらひょうすべかまいたち。よりどりみどりでございます。地獄の釜蓋がひとたび開けば、あなたさまもただではすみませぬ。九相図より蘇った小野小町は高嶺の花。源氏供養も楽しゅうございます。ささ、まずはその懐の小刀をいただきましょう。あなたさまの血を受けて、この打掛もいっそう艶を増しましょうから。


Twitter300字SS参加作品

第三十五回 お題「休」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る