第3話 すいません、誤解が非常に無情だと思うんですが……?


「俺の今の状況を簡潔にいえばホームレスだ。ついでに言うとここがどこかも分からない」



これを認めてくれなかったら今までの努力(してないけど)が水の泡だ。

これを最初に伝えるべきだった……。



「はあ、思ってた以上に深刻ね……。ねぇ、諦めてもいい?」


「やめて!こんな可哀想な俺を見捨てないで!あ、そういえばお金も持ってないぞ」


「え、お金も持ってないの?ということはさっき堂々とヒモになる宣言したってこと?もう罵倒されたくでやってるようにしか思えないわ。いや、罵倒されたくてやっているのね。間違いないわ」


「だ、だって助けるつもりで話しかけたって言ってくれたから……。というか俺がMという認識で進んでしまってるのですがそれは」



見捨てられたらマジで終わる、Mかどうかなんて気にしてる場合じゃない。

ほらそこ、結局気にしてるじゃないかとか言っちゃいけない。



「まあ、流石の私でも可哀想過ぎて見捨てられないわ」



見捨てられなくてマジで助かった。

とにかく感謝をしなきゃ、感謝。



「ありがとうございます!」


「冗談よ」


「へ?冗談って一体何が?」



見捨てるなんて言わないだろうな……。



「可哀想だから、見捨てないって言うのが冗談よ」


「え、え……?」



こいつ言いやがった。

いや言ってないけど、見捨てるって言ってるようなもんだろ。

もう泣くぞ、おい。



「最初からどんな状態でも、見捨てるつもりなんてなかったわ。ってなんでそんなに泣きそうになってるのよ」



「い、いや、泣いてなんかない。泣きそうになってるだけだから」


「その程度の違いならどっちでもいいでしょ……」


「と、とにかく、この俺を救っていただきありがとうございます!玲さんは、実はというかやっぱりというか、優しいお方だったんですね!」


「なんで選択肢に『実は』が入っているのよ。私が嫌な奴っていうのを1回は思ったってこと?そして、それを伝えてくるのは結局透はMだということ?」


なに、感謝の気持ちが伝わってないだと……?


土下座じゃないと満足しないってことか、まったく、ワガママな子だなぁ。

まあ、生きる術がないところを救ってくれるんだし、もう既に2回やったし、土下座なんて安いもんだぜ。



「ありがとうございます!本ッ当にありがとうございます!!」



異世界来て半日も経ってないのに、これで土下座3回目になったけど感謝の気持ちを表す為だからね。

仕方ないね。



「なんで急にわざわざ土下座してまで感謝してくるのよ……。会話の流れ的に、Mということを察してくれて、ありがとうってことなんだろうけど、それにしても、土下座してまで感謝することなの……?透は真性のMだったのね」



よし、ちゃんと必死になって感謝しているってことは伝わったみたいだ、よかった。



「って、え?今、俺の事真性のMって言った?なんでただでさえ確定されてる俺のM疑惑がそんなに深まってんの?」



確定されてるのに疑惑って変な話だけど……。



「え、それは私がM疑惑をかけたらにとおるが土下座で感謝してきたからだけど」



なん……だと……。

俺の必死の土下座はかえってM疑惑を深めていたというのか……。



「あの、宝条 玲ほうじょうれいさん?あの感謝は『俺を助けようとしてくれてありがとう』の感謝なんだけど……」


「あら、そうだったのね。申し訳なかったわ。ということは透のMレベルはせっかくMAXの5だったのに4に格下げね」


「結局重症なMじゃねえか!てか、こんなMか否か話し合ってる場合じゃないと思うんですが……」


「そうね、じゃあ結論は透はMということで」



俺がMなのはやはり揺らぎないのか……。

そして、一生Mとして扱われるんだろうな……。


ひどい。


「で、具体的に何をすればいいんだ?」って聞きたいところだけど、その前に、



「それはさておき、ちょっと御手洗いに行ってきてもよろしいでしょうか」



学校から家までずっと我慢してたんだ、流石に許してくれるよな。

玲がそんな事情知るわけないけど。


てか、中世風だけどお手洗い事情はどうなんだろう。

2階から糞尿が降ってくるような時代じゃなかったっけ?


記憶力がいいとは言っても歴史とか真面目に受けてこなかったからなぁ。

歴史の時間はきっちり睡眠を取って健康体を保ってたなぁ。

懐かしい。

まあ、そこら辺の記憶が怪しいけどそんな時代だった気がする。

違ってても世界史は寝てるし仕方ないね。



「えぇ、ほらそこの家の角にでもしてきなさい」


「俺は犬じゃねえよ!てか大きい方だから!言わせんなよ恥ずかしい」


「あら、Mだからそういうプレイが好きなのかと思ったわ。というかそんなことは言わなくていいわよ」


「そもそもの話、俺はMじゃないんですが……?」


「『家の角にでもしてなさい』はさすがに冗談よ。そんな姿見たくないもの」


「俺がM否定したのは無視?」


「ほら、あそこにあるからいってきなさい」



本格的に無視されてるんだが……。

なんか悲しい。



「まぁ、ありがとう」



──あー、えーとここかな?

ん、これって水流トイレ?

確か古代ローマは水流トイレだった気がするけど中世になって受け継がれなかったんじゃなかったけ?


いやまあタイムスリップしたわけじゃないんだし関係ないか。

あれ?タイムスリップでは無いという確証はないな。

でも、街並みはとにかく綺麗だし、日本人ネームいるし、カジュアルスタイルだし、異世界と考える方がまだ納得がいくよな……?

そして、魔法要素が出てくれば何よりの証拠になる。


いやぁそれにしてもチンピラとかに絡まれなくて助かった。

チンピラに絡まれてたら完全に登場人物違うだけのリゼ□になるしな。

平和なルートでよかった。


……なあ、もしかしてこれ、フラグになってね?

そして、この思考が更に、フラグになってね?

そして、この思考が更に、フラグになってね?

そして、この思考が(ry


おいおいおいおい、せっかく平和に解決ルートだったっていうのにチンピラとかに絡まれんのは勘弁して欲しいんだが……。

しかもこう思ってる場合に限ってチンピラよりヤバイ奴に絡まれそう。


どっかの秘密結社とか、「お前、この世界の人じゃないな?なら排除する」的な奴とか。

まあ、チンピラくらいならそこら辺にあるの使ってどうにかなりそうだな。

特殊部隊組は、当然無理。


身体能力悪くないって言っても、とても良い訳でははないからな、人並みにできるくらいだし身体能力はアテにしない方がいいよな。

体力だけには自身があるけど。


ん、そういえばこの異世界って魔法ってあんのかな?

あったとしても、俺が不適正だから使えないとかなったら、被害が増える一方なんだけどな。

まあ、考えても仕方ないしそろそろ終わらせて出るか。



「ふぅ、スッキリしたー」



わざわざ声に出す必要なんてなかったな。

だからどうした、玲を探そう。

たしかあっちの方から俺は来たはず……。


あ、いたいた。

良かった良かった。

どうやら俺は見捨てられることは無かったみたいだ。

ん、あれってもしかして……。

いや、まさかな……。

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