文科省

「 はあ、警察の方ですか 」

「 はい。捜査一課の竹下と申しまします 」


受付の人はやっと納得し、資料を出した。


ブーンと自動ドアから竹下が出てきた。


「 竹下さんにしてはずいぶん、遅かったですね 」

「 警察手帳はあまり見せたくなかったもので 」

外で本を読みながら待っていた中沢。


二人は今、文部省前にいる。

竹下が私立東山高校に関する資料を得てきたところである。


「 では、早速見てみましょうか 」

二人して資料を開けた。

普通、道端ではやらないことである。


「 おお、竹下さん、ありましたよ 」


ー学校設立に関する援助ー

様々な援助の内容が書かれている。


「 では、持って帰って内容に問題がないか調べておきます。

中沢くんも、何か資料からわかったことがあれば連絡してください 」

「 はい 」

そう二人は別れた。



ー警察庁ー

「 最近、お前らの下が何やら勝手に動いているらしいじゃないか 」

「 そ、それは…… 」

総監の高松は平伏した。


「 お前なら、なんとかできる。信頼しているからな。そういうことだ 」

「 はあ、 」

信頼している、という言葉に悪意は感じられなかった。


「 まあ、お前も忙しいだろう。戻れ 」

「 失礼致しました 」

高松はこそこそと帰って行った。


「 ふう…… 」

彼は深いため息をつき、空を仰いだ。



「 長官。失礼します 」

「 入れ 」

彼は通る声で中に通した。

次長だった。


「 失礼致します。只今、文部省の方から問い合わせがありまして、ご報告に参りました 」

「 そうか。なんだった 」

「 どうやらあの、東山高校について調べている刑事がいると。念を押しての問合せだそうです 」


「 わざわざ報告に来るとは、お前も…………、知ってるんだな 」

「 内密に致しますので、ご案じなく 」


彼はゆっくりと椅子を回し、また窓の空を見上げた。

「 情報を、廃棄しろ 」


次長はため息をし、「 致し方ないか…… 」とぼやいた。

「 失礼致しました 」

ゆっくりとドアを閉じた。


警察庁長官、彼の名を片野等といった。

ふー、と腹式呼吸というものを彼はやってみた。

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