第4話 学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史(下)ハワード・ジン=著

ハワード・ジン『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史(下)1901-2006年』R.ステフォフ=編著、島見真生=訳、あすなろ書房、2009 

ISBN978-4-7515-2612-5 


政治学者、歴史家、社会評論家、劇作家として活躍中の著者によるアメリカの裏歴史本。日本の原爆投下について、どう書いてあるか知りたくて(下)だけ読んでみました。期待したほど踏み込んだことは書いてありませんでしたが、投下した必要性に著者は疑問があるようです。


全体的に体制批判の内容なので気が滅入る話が多いです。オバマさんが大統領になる直前で終わっていて、希望を持っているような最後ですが、いかんせん今の状況を思うと時代はそう変わらないようですね。


カルフォルニアとアリゾナの南の国境沿いにフェンスを建てるという計画の話が出てくるのですが、トランプさんの発想ではなかったんだなと知りました。国の勢いや愛国心が薄れると移民批判するという図式が定番のようです。ありがちですね。


国境が陸続きの苦労はあるでしょうし、不法移民は不法ですからダメだとは思いますけど、文脈の流れで皮肉がきいてると思った箇所を抜粋します。


(第十三章 素顔のアメリカ 185ページ より)

”アメリカ政府は気づいていないようだが、貧しいメキシコ人が入ろうとしている場所は、皮肉にも1840年代にアメリカがメキシコから奪いとった地域なのである。”


本書の終わりに出てくる詩の一節がかっこいいので抜粋。20世紀がはじまったころ、ニューヨーク・シティの繊維工場で働く女性たちが労働運動を起こすときに励まされた詩とのこと。19世紀イギリスの詩人パーシー・シェリーの詩の一節。


(第十四章 人々が選ぶアメリカの未来 195ページ より)


”まどろみから覚めたライオンのように 立ちあがりなさい

打ち負かされることのない数をもって!

その体を縛る鎖を 大地へとふり捨てなさい

眠っているあいだに身を濡らしていた露を ふり払うがごとくに――

おまえたちは多く 彼らは少ないのだから!”




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