第7話

今日から、馴れない通学路と電車を使い、学校へ向かう。僕の場合、電車を使わず自転車というてもあったが、事故のことを考えると怖さがまし、電車にすることにした。

「おはよう、最上くん」

車窓からの景色を眺めていると誰かが、僕に声をかけてきた。僕は、その声の持ち主のほうに目を向けると、そこにはクラスメイトになった鮎川雛がいた。

「わっ。お、おはよう」

僕は、また思い出してしまうのかと怖くなり、驚きの声をあげた。それでも、鮎川さんは笑顔で僕のほうを向いている。

「最上くんもこの駅から乗っているの?」

鮎川さんは、まるで、知っているような口ぶりで僕に問いかける。

「うん」

僕は、これ以上会話をさせないようにそっけない返事をした。

「そっか」

鮎川さんにも伝わったのかそれ以上話してこなかった。


「おはよう、最上くん。道、迷わなかった?」

八代くんは、僕を見かけてからの第一声がそれだった。確かに、この高校は、道が入り組でいて分かりにくい。しかし、僕は、前を歩く人の跡をついていくという卑怯な手を使い、ここまでこれた。

「迷ってはいないな。でも、一週間以内に迷ってしまうかもしれないな」

僕は、そう言って八代くんとの会話を開始した。今日は、新入生歓迎会があるとか写真撮影があるとか。まるで、成績優秀者が話す内容のようだ。それでも僕は、少しだけ、居心地のよさを感じていた。


帰りごろになると、部活見学でどの部活もたくさんの人が押し寄せていた。

僕も、いくつかの部活を見ていたがピンと来るものはなかった。八代くんは、あったといっていたけれど。

「最上くんもサッカー部に入ろうよ」

八代くんは、元々目当てであったサッカー部を僕に勧めていた。だが、僕は、運動部にはいるつもりはなかったため、八代くんには申し訳ないがそれを断った。

「まあ、人には向き不向きもあるからね」

八代くんは、最後に意味深なことを吐きながら、僕と別れた。


駅のホームにつくと、また鮎川さんに会った。鮎川さんは、そのときは僕に気づいてはいなかった。しかし、電車が来るアラームがなったとたんに気づいた。

「何部にはいるか決めた?」

鮎川さんは、僕に笑顔を向け自然と接してきた。僕は、思わず首をふる。

「一日目だけでは、決まる人なんて少ないよね。候補とかないの?」

鮎川さんは、朝のことを気にしているのだろうか。話が途切れないように攻めてくる。

「ない」

僕は、ポツリと答えた。鮎川さんは、優しく頷いたあと、ひとりでに自分のことを語りだし始めた。

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