第8話 10回クイズ(1話完結)

 今日が10回目の結婚記念日だ。子宝は授かっていないが幸せな人生だ。10年たっても主人のことを愛している。


 友達の紹介で出会い、なんとなく付き合いだしたのがまさか結婚までいくとは思わなかった。付き合うほどに魅力を感じる人だ。


 私が疲れているときなどは、何も言わずさり気なくサポートしてくれる。また私の両親をとても大切にしてくれる。「自分の愛する人を生んでくれた人を大事にするのは当たり前だろう」飄々とそんなことを言うところを本当に尊敬している。 


 こんなにも良い人がパートナーにいることは誇りに感じている。まあ確かに全て完璧ということはない。でも他の夫婦と比べると本当些細なことだとは思う。


 主人はグルメに目がない。食べ歩きも好きだし、自分で作ることも好きだ。各地から美味しいものを取り寄せたり、食を目的に旅行なども行く。


 私も食べることが大好きだしそれは問題ない。問題だと感じているのは、食に関するクイズを出してくることなのだ。何度も言うが本当に些細なことだとは思っている。でもクイズが何か特殊なのだ。特に10回クイズが。


 風呂から主人が出てきた。先程ささやかなパーティーを二人で行い、シャンパンやワインなどをたくさん飲んだのでかなり酔っ払っている。きっとこれから10回クイズを出してくるだろう。苦痛だがやらざる得ない。

 

 「あー良い湯だった」

 そう言いながら缶ビールを開けている。まだ飲む気か。よっぽど機嫌が良いのだろう。


 テーブルの前の席に座り、主人が語りかけてくる。

「10回クイズしようか」


 これを断るとスネてしまうので、「良いよ」と笑顔で答える。


「じゃあみりんと10回言って」


「みりん、みりん、みりん、みりん、みりん、みりん、みりん、みりん、みりん、みりん」


「焼酎に米麹と蒸した糯米を混ぜ、数か月間置いて糯米を糖化させ、圧搾してつくる甘い酒。黄色透明で粘りがある。アルコール濃度は13~22%と高い。そのままあるいは屠蘇酒として飲用するが、おもに調理に用いられている。中国では糯米を用いた酒は多く、みりんもまた中国から伝わったものと考えられる。室町時代末期ごろには、焼酎と麹を混ぜた甘い酒の作り方があり、江戸時代には相当量つくられていたらしい。醸造は焼酎製造技術とも関連し、三河地方に集中していた。近年はアルコール製造技術や量産の技術が開発されて、京都府、千葉県のアルコールメーカーによって量産されている。酒税法上の定義は、(1)米、米麹に焼酎またはアルコールを加えてこしたもの(古来の方法)、(2)清酒における増醸のように、(1)の製品にブドウ糖、水飴、アミノ酸塩などを加えたもの、とされている調味料は?」


「みりん」


「正解!素晴らしい!!」


ほんま怖いねん。これ何がおもろいねん。

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