【2】




これはアレだね。完全にあのピンクの髪した逆ハービッチのせいだわ。


あいつ、魅了かなんか使ってると思う。



記憶とか封印した方が楽しそう!とかはしゃいでたあの頃の自分を殴りたい。


結果魅了にやられてなんも楽しめないまま終わるというね…。



ビッチのキス見て溢れ出たあの感情の名を今なら分かる。


あれは、そう、殺意だ!



この私を差し置いてイケメンとキスとか殺意しか沸かない。


私だってしたいよ!


イケメンと接吻したいよ!イケメンと接吻したいよ!


大事なことだから古くさい言い回しで二回言ったよ!



イケメンとキスしたいならなんでわざわざ男になったの?という質問は受け付けません。



べ、別にあわよくばBなL的展開になるかもとか思ってないんだからね!(ツンデレ風味)






身体をお借りしたお礼に状態異常解除をしてあげよう。これでもうピンクビッチちゃんの逆ハーからは卒業だよ。


やったね!



チャラ系イケメン君の身体から抜けた私は、自分の世界へ翔んだ。









「……と、おい桐人。」

「…んぁ?……」

「急にボケっとしてどうしたよ?」



怪訝そうな石田が居る。


あれ?…俺なにしてたんだっけ?



まぁいっか。



「あ?…あ~、ちょっと寝不足で今すごく眠いんだよ。」


「お前最近、美羽ちゃんに入れあげてたよな。さては美羽ちゃんのことを想って、夜も眠れないってやつか。」


「んなわけないっしょ。」



ニヤニヤする石田に、冷たい声音が出る。



「へ?だって美羽ちゃん好きだろお前。…フラれたか?」


「フラれてねーし。そもそもこの俺が、こんなにもカッコいい俺が、フラれるとかあり得ない。…いいか石田、良く聞け。世の中には数えきれないほどの女子が存在するんだよ。俺は、多くの子猫ちゃん達と愛し合うために生まれたんだ。そんな俺が1人の女子だけに掛り切りなんてダメだろ?」


「何、キリッとした顔で最低なこと言ってんの?」


「そんな訳で、もうアイツには構わないよ。」


「ああ、そうですか…。」



今更ながら、ビッチに夢中だった自分に嫌悪感が…。時間を巻き戻せるなら戻して、自分自身をぶん殴りたい。


お前の心はそんな女のものじゃないだろって。



もしも正気に戻れなかったら、俺はどうなってたのかな?





ちょっと想像してみたら、なんか恐ろしい未来しか見えなかった。










◇◇◇



「お久しぶりでーす」


モニターから視線を外して声の方を向くと、暫く見掛けなかった同僚がいた。



そうだ、イケメン高校生とキャッキャグフフしよう



どっかのキャッチコピーみたいな事を言って飛び出して行ったが実現させたんだろうか。



青い髪に青い瞳のクール系美人なのに中身が微妙だ。



「堀ちゃん。私が居なくて寂しかった?ねぇねぇ寂しかった?」



うぜぇ…



堀じゃなくてホーリーだから。そんな日本人みたいな名前じゃないから。



訂正も返事も面倒で無視してモニターを見る。




…あ、聖なる泉の側に聖剣差しとくの忘れてた。


勇者って今どの辺だったかな?



「ちょっと現地行ってきます。」


「えっ、ちょっ堀ちゃん!久しぶりなんだから話しようよ!」





現地に行く必要はないが、長々と愚痴もしくは自慢話に付き合わされるのは嫌なので、さっさとこの場から去った。



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