カウントダウン

 前回と同じ洞窟の中へ転送された。

「ここ何処?」

「地下だよ」

「それは分かってるわよ。どこの地下なの?」

「知らん」

「知らんて、いい加減な男ね」

「アルマではない他の惑星、異次元かもしれん」

「それじゃあ答えになってないじゃないの」

 不満げなリオネなのだが他に答えようがない。


 目の前の白い扉が下に開く。

 ゼクローザスを前に進め中へ入る。そこは10m×10m×10mの立方体だ。頭頂部の羽飾りが天井へ接触する。

 此処は狭すぎて鋼鉄人形の能力を全て発揮できない。実験の主催者側は生身の人間での実験を想定しているのだろう。そこへ鋼鉄人形と共に俺を引っ張り込むアルゴルの意図は何なのだ。


 入ってきた扉が閉まる。

 相変わらず抑揚のない電子音声がしゃべり始めた。

「実験ヘノ参加に感謝イタシマス。ソレデハ実験会場マデ移動シマス。到着マデ4分30秒デス」

 部屋が動き出した。左右にGがかかるが時々重力を感じなくなる。地下深く潜っているのだろう。

「到着マデ4分10秒」

 電子音声が淡々とカウントダウンをする。

「ねえハーゲン。皇女様とはどうなってるの。まだ付き合ってるの?」

 俺の首に腕を回しリオネが尋ねてくる。

「お前馬鹿か。こんな時に何考えてるんだ」

「私だって一応女子なんだから。恋バナは大好きなの」

 高慢で高飛車で生意気な性格のせいで普段は忘れているのだが、こいつはよく見るとなかなかに可愛いのだ。白い肌に短くした黒髪が映える。大きな黒い瞳が愛らしい。ただし、体格は華奢でいわゆるロリ体形。

「スマンな。その件に関しては口外できない」

「え~ここで喋れば関係ないんじゃないの?異次元だか何処だか分んないんだから絶対にバレないよぉ」

「そんな問題ではないんだよ。ネーゼ様との約束なんだ」

「え?超ド田舎に左遷されてもまだ愛しい方との約束を守るの?やだ。あんた見かけによらず律儀なのね。で、まだ付き合ってるの?しゃべっちゃいなさいよ」

「悪いが言えないんだ」

「もうつまんない男ね。じゃあ、私が……」

 そこで電子音声が到着したと知らせる。

「実験開始マデアト30秒、29、28」

 カウントダウンが始まる

「そろそろ本番だ。話はあとだ」

「ケチ」

 そう言ってむくれるリオネだったが、俺の首に回していた手をほどき正面を向いて戦闘に備えた。

「20、19、18、17」

「何が出てくるの」

「知らん」

「分からないのと戦うんだ」

「ああそうだ」

「酔狂ね」

 盾を構え抜刀する。身を低くし戦闘開始に備える。

「10、9、8、7」

「ちょっと怖いかも」

 さすがにリオネも不安そうだ。

「大丈夫だ」

「3、2、1、0」

 同時に目の前の白い壁が下へ落ちる。向こう側も一辺が10mの立方体。戦闘空間は縦10m横10m奥行き20mになる。

 そこにいたのは大きなサメだった。

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