無言電話

桐谷春木

閑話

 はい、どちらさま?


 ………………………………。


 こんばんは。


 ………………………………。


 それとも、こんにちは?

 もしかして、おはようかしら?


 ………………………………。


 時間の感覚が無いわ。

 ずっと、もうずっと長い間ひとりきりだったから。

 話しをするのは本当に久しぶり。

 こんな機会、ずっと無かった。

 話をたくさん用意していたのに、すべて忘れてしまいそうなくらい永く感じたわ。

 あなたが電話をくれて嬉しい、とても嬉しいわ。


 少しの間、話に付き合ってもえるかしら?


 ………………………………。


 そうねぇ……、硬貨にまつわる話を用意しているの。

 私がまだ中学生の頃、仲の良い男子と女子がいたの――。

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