創造主Ｙ.Ｏ.Ｎ.Ｎと英雄たちとの余興曲 （バディヌリー）

第1話 創造主

　あーーー。退屈なんやで。　先代の神さまをぶっ殺したのはええけど、ここまで神さまの仕事が無いとは想ってなかったんやで。

　しっかし、思念体でしかない、わいらを支配したいからと言って【神さま】を名乗るのはいけ好かなかったんやで？

　まあ、それは置いておいてや。大切なことは、これからどうするかなんやで？　わいが先代の神さまをぶっ殺したのはええんやけど、暇なのはいただけないって話なんや。

　ちょっと、神さまの力を行使してみましょうかいな。マニュアルを読む限りでは、【創造】、【ご破算】、【寵愛】の３つの力が使えるわけなんやな？

　【創造】は言葉通りに、わいが【想像】したものを作り出せるって言う権限や。でも、なんで先代はこんな面白そうな力を行使しなかったんや？　不思議でたまらんわ。自分で自分の好きな【世界】を作りだせるっちゅうことやんかいな。

　わいなら、こんな何もない空間のままにしておかないんやで？　先代が何を考えていたのか、よくわからんわ。まあ、わからんことを考えるのは時間の無駄やで。いくら、わいのような思念体に寿命という概念が希薄だとしても、確実に終わりの時は近づいているんやで？

　せやな。まずは、この何もない空間に【大地】と【海】を【想像】するんやで。ふぬぬーーー！　ふんぬーーー！

　よっし、できたんやで。おっと。平面的に考えてもうたから、海が端っこでダダ漏れ状態になっているんやで？　これだと、すぐに海が干上がってしまいますなあ？　まあ、そこは【想像】で、世界の果てで【海】が下に落っこちないようにしておくんやで？

【海】は上手いこといったんやけど、問題は【大地】の方やで？　こんなキレイな円状だと、趣きが削がれますなあ？　ちょっとこの辺りを削ったり、凹ましたり、いびつにしてみたりっと。おっ？　これは良いんじゃないんか？　力を込めすぎて、【大地】が３個に分かれてもうたけど、これはこれで面白いんやで？

　よっし、次はこの【大地】に【生き物】を作るんやで？　どんな【生き物】を作ればええんやろか。マニュアルに載っているサンプル集には、【モンスター】、【ヒト型種族】、【植物】などなどいろんなモノがありまんなあ？

　あっ、【生き物】だけじゃなくて【無機物】のところに【鉱物】ってのもありますなあ。これは何で必要なんや？　マニュアルには、【鉱物】を利用して、【ヒト型種族】や【モンスター】が【道具】を作り出すようになりますって記載されているんやで？

　ほうほう。神さまの創造物のくせに、生意気にも、わいらと同じく【知恵】を身につくんでっか。こりゃ、面白いんやで。

　んじゃ、手始めに【モンスター】を配置するんやで。【モンスター】はこっちの大地に配置してみましょうか。

　んで、次に【ヒト型種族】をあちらの大地に配置してみましょうか。

　最期に、余った大地には、【モンスター】と【ヒト型種族】の両方を配置してみましょうか。

　それぞれの大地で、【モンスター】と【ヒト型種族】がどのように発展していくのが楽しみなんやで？

　わいが【大地】【海】【モンスター】【ヒト型種族】【鉱物】【植物】をバランス良く配置したんや。けどな？　なぜか理由はわからへんけど、開始から少し時間が経過しただけで、【モンスター】と【ヒト型種族】と【植物】が全滅してもうたわけや。

　おっかしいなあ？　何か間違った手順を踏んでしまったんかいな？　もう１度、マニュアルを読むんやで？

　あああ！　しまったんやで。【モンスター】と【ヒト型種族】ってのは【食料】となる【家畜】や【魚】も必要になるんかいな！　わいは思念体やから、その辺り、すっかり失念してもうてたわ！

　他にも忘れていることがあるんちゃうか？　もっと、マニュアルを精読するんやで。

　それから、わいは【生き物】には【光】も必要だと言うことを知るんやで。なんか面倒くさいなあ。マニュアルには、【生き物】はある程度の【熱】も必要であると記載してあるんやで。うーーーん。【光】の強さはこれくらいで良いんかなー？　あっ、しもたんやで。【光】が強すぎて、【大地】が炎に包まれて、さらには【海】が干上がってしまったんやで？　もう、面倒くさいわーーー。先代の神さまが神の力を行使しなかった理由がわかったような気がしてきたわーーー！

　わいはそれから思考錯誤しながら、なんとか【生き物】たちが全滅したりしない【世界】を創り上げることに成功したんやで。ふううう、時間の概念が希薄な思念体のわいと言えども、こりゃ難儀させられたんやで。

　ほな、ちょっと、休憩しましょうかいな。マニュアルには上手く【生き物】が活動できるようになったら放置しておけって書かれていますさかいな。

　うーーーん。よく寝たんやで。【世界】はどうなっているんやろな？　わいを楽しませてくれるような変化が起きていますかいな？

　おお？　おお？　おおお！？　わいの予想を通り越して、面白いことになっていますな！　マニュアルには放置しておけと書いてありますけど、これは神の力のひとつである【寵愛】を使わせてもらいまっせ！

　わいの【寵愛】を受けるにふさわしい【ヒト型種族】をどれにしようかいな？　なるべくなら、わいの心を揺さぶることをしてほしいんやで！　イヒヒッ！