第42話 バチュラーパーティと秘密

 俺は、ロバート・スペード! いろんな女達がデートに誘ってくる。


 一夜の恋だってそれなりに楽しむさ。男なら別に特別な事じゃない。美味しそうなキャンディの味見がしたくなる。キャンディは、みんなかわいい包装がされてるだろう。着飾った女もキャンディと同じ。開けて口の中に入れると、甘すぎてくどかったり、タフィのような味だったりと色々さ。毎日は飽きるが、時々甘いキャンディが食べたくなる。男なら、皆同じ! それが、男だろ。





◇ ◆ ◇


 今夜この高級ホテルのスイートでバチュラーパーティが開かれる。そうさ、あのジョニーがチェルシーと結婚する。今夜のパーティは俺がジョニーのために企画したバチュラーパーティだ。



 ジョニーは昔から車が好きだった。高校を卒業して今は整備工として働いている。ちょっと黒ずんだ爪とたくましくなった腕があいつの整備工としての誇りなんだろう。


 それにしても、ジョニー。まだ結婚は早いんじゃないのか?


 あいつは昔と変わらない顔で笑ってた。

「ガキが生まれる」ってな。



 あのぶっ飛んだチェルシーが、母親になるのか。あの頃は、俺の上でヒィーヒィー喘いでたのにな。高校の頃が懐かしいぜ。




 今夜は、ジョニーのために最高のパーティを企画した。


 いい酒に、いい音楽……そして若いストリッパー。


 バチュラーパーティといえば、ストリップだからな。


 

 美味しいシャンパンをガブガブと飲み、ジョニーのために呼んだ若い金髪ダンサーのストリップを楽しんだ。みんな最高に盛り上がってる。


「ジョニー、いいぞ。でも、ダンサーには手を出すなよ」


 男たちがひやかしながらストリップを楽しむ。腰をくねくねさせながら色気たっぷりに踊るダンサーの体は男たちを最高に興奮させた。


 若いこのは、まだストリッパーという仕事に慣れていないのだろう。踊り終えると恥ずかしそうに身支度をはじめた。


 出張ダンサーの代金は頼んだ時、すでに支払っているがこのにチップを渡さないとならない。ダンサーのこのが仕事を終え部屋を出る時、俺も一緒に部屋を出た。


「今日はありがとな。これチップだ」


 ウブさが残る若いダンサーは恥ずかしそうに、ニッコリ微笑んでお金を受け取った。きっと、この子にも何か事情があるのかもしれないな。そんな思いで彼女を見送っていた。





 ガタン……


 ちょうどその時だった。



 隣のスイートの部屋からひと組の男女が出てきた。


 若い金髪の女、その女の腰に手を回している……男


 かなり急いで身支度を整えたのか、部屋を出て来てもなお、女は金髪の髪を軽くかき上げ髪を整えている。





 どこかで見たことがある雰囲気だと思って目で追うと、男は紛れもなく知っている顔だった。






「親父、何やってるんだ」



 親父は驚いた顔してたぜ。


「お前こそ、こんなセクシーなお嬢さんを連れ込むなんて」


「バカなこと言うな。今夜はジョニーのバチュラーパーティでストリップを頼んだんだ。俺のことより親父はなんで若い女とホテルに来てるんだよ」


「ロバート、この子は私の秘書のスージーだ。最近雇った子で、まだよく仕事がわからなくてな。それで教えていたんだ」


「親父の秘書は、そう言う役目なのかよ。親父には康代がいるだろう」


「ロバート、お前もわかるだろう。康代は、いい女だ。誰にも渡したくない。心も体も汚れをしらない。俺だけのものだ。だが、男には、時々遊びも必要なんだ。この子は、それを承知で俺の秘書になった。毎月の給料としてその分も加算してある。お前だって、たくさんの女と遊んでるんだろう。男は、家を守る女と遊ぶ女の両方が必要なんだよ」


「見損なったぜ」


「ロバート、康代には絶対に言うな。あいつを悲しませたくないだろう。あいつと俺が別れたらあいつは家を出て行く。そうなったらお前も、康代と逢えなくなるぞ」


「何言ってんだよ」


 親父は、いつも通り冷静な態度で秘書だという、愛人の女をエスコートして帰って行った。女もすべて納得しているのか、何ごとも無かったかのように一言も話さずに黙ってついて行く。




  二人が去って行く後ろ姿に、俺の脳みそは打ちのめされた。

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