ツバメと風船

アほリ

1#新居!

 ひゅーーーーーーー・・・さささっ!!




 雄ツバメのレッシュと雌ツバメのフーレの番は、今年もこの街にやって来た。


 越冬地の、南の遠い遠い遠い何万キロ離れた国から、ぶっ通しで飛んできたので、番はヘトヘトに疲れはてていた。


 「ねえ、何処で休む?」


 「あそこがいい!ほら、去年も巣を作ったでしょ?ほら、あそこ!」


 「あそこって、何処?」


 「『あそこ』は『あそこ』!ほうら、見てみなよ!見覚えある?去年、ここ来たでしょ!!

 『あそこ』の人間達は、皆優しいし、心よく出迎えてくれるからねえ!」


 「まだ、あの巣が残ってたらいいんだけど。」





  ぴゅーーーーーーーーー・・・




  ぴゅーーーーーーーーー・・・





  2羽は、銀色に光る人間のショッピングセンターの中へ入っていった。




 「あった!!ここだここだ!!」




 雄ツバメのレッシュは去年、屋根近くに設けた換気口の上に作ったことを思い出した。




 レッシュは、恐る恐るその換気口の巣の中を覗いた。





 「ああん・・・?何か用かあんちゃん・・・?!」




 ぎろ・・・




 去年使っていた巣に、既に先客のツバメが睨みを効かせて居座っていたのだ。




 「あのお・・・そこは・・・」


 

 雄ツバメのレッシュは、先客のツバメに汗だくで話しかけた。




 ぎろ・・・




 ぞくっ!!




 雄ツバメのレッシュは、先客ツバメにまた睨まれたとたん、恐怖の余り硬直してしまった。


 


 「な・・・何でもありましぇーーーーん!!」




 ぴゅーーーーーーーーー・・・




 「どしたの?レッシュさん?」


 慌てふためく雄ツバメのレッシュに、雌ツバメのフーレが訊いた。


 「ごめーん!去年の巣が他の奴に捕られちゃった!!」


 「なーんだ、情けないねえ?それでも雄ツバメ?力ずくで取り返してきなさいよ!」


 「し、しょうがないじゃん!だ、だから新しい巣をここの何処かに作ろうよ!」




 と言うわけで、2羽のツバメはショッピングセンターの天井や屋根をくまなく調べて、巣がかけられる最適な場所を探しまくった。




 「あっ!フーレちゃん!」




 「なあに?レッシュさん?」




 「あそこがいいんじゃね?あそこ!」




 雄ツバメのレッシュは、ショッピングセンターの灯りの蛍光灯の傘を翼で差し示した。




 「あら、いいわねえ!そこにしましょ!」




 2羽のツバメがその蛍光灯の傘に巣を作ることにしたのが、後におこる試練に繋がるとはまだ思いもしなかった・・・



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