最終話 幸せ

炎がやっと勢いを無くした。

私は後ろに突然倒れた。

「わわっ!」

少女が私を受け止めてくれた。私から出た血で服が汚れているが、構っている様子はない。

少女は私をゆっくりと地面に下ろしてくれた。

私は突然大量の血を吐いた。

少女は驚いて一歩下がったが、心配してくれたのかやっぱり一歩近づいてくれた。

「大丈夫、まだ死なないよ。」

あくまでも「まだ」だが。

少女が急に泣き出した。そして質問してくる。

「あなたは、どうして私を助けてくれたの?」

私は目を閉じたまま、フッと笑う。

「何故、か...うん、君がそこにいたからかな。あと、君が君だからだ。」

多分、この少女は意味が分からないだろう。

「私は、もうすぐ死ぬ。君には私の言っていることは分からないだろう。」

そして、白い髪と白い目の私は言う。

「私の最後のお願いだ。君には、生きていてほしい。精一杯生きて、幸せになって欲しい。」

そして、白い髪と白い目の少女は答えた。

「私、精一杯生きるよ。きっと、幸せになるよ。」

私は、ニッコリと笑って、

「ありがとう。頑張って生きるんだよ、スズラン。」

長い間忘れていた、私の名前を言った。

スズランの花言葉は、「幸せの再来」。

この花畑一面に咲いている花だ。

私は、段々薄れてゆく意識の中に、あの人の姿を見た。

私は、過ちを償えたのかな?

あの人は、私だったんだ。

あの少女、いや、「私」は、幸せになれるかな?

私の最初の幸せは、あの人に会えた事だった。

私の幸せの再来は、「私」に会えた事だ。

「私」も、きっと幸せになれるだろう。

だって、私は、こんなにも、

――幸せなんだから。

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