俺の周りのヒロインがみんな人外なんだが

プル・メープル

プロローグ 1

 俺は普通の生活を送るごく普通の高校生。普通の容姿に普通の身体能力、普通じゃないのは成績くらいか―――。もちろん悪い方にだ。


いわばベスト・オブ・ザ・普通ノーマリスト!普通界の王者という名誉などあるわけもない肩書きを背負わされそうなハイスクールボーイ。


主人公っ気などミリ単位もない、ただの高校生。だが、俺の学校にはそんな俺とは正反対の存在がいる。


美人で成績優秀。優しくて全校生徒の憧れ。そんな人が……。


「おはようございます」


ほら、来た……。彼女はいつもこの時間に来る。綺麗な金髪ストレートの髪。キラキラと子供っぽさを彷彿させる瞳。スラリと長く、色白な手足。完璧なのだ。


彼女は神宮寺しんぐうじ 桜良おうら。名前からしてエキスパート。ザ・学園のヒロインだ。


そして彼女はもうひとつ、ヒロイン気質を持っている。それは―――――。


「オーラちゃん、学校にはもう慣れた?」


「はい!お陰様で!」


「もうそろそろ2週間か?」


「はい、明日で2週間になります」


そう、彼女は転校生なのだ。どこから来たの?と聞けば北の方、とのこと……。どこに住んでるの?と聞けば上の方、とのこと……。いわゆる素性を明かさない謎キャラミステリラである。


彼女を取り巻く2人の女子生徒。白いカッターシャツにベージュのジャケットをはおり、下はスカート、片方はズボンだが……。どちらもベージュのチェック柄である。これが俺の高校の制服。


そんな平凡な服装に身を包みながらも、彼女は一際輝いている。別に興味があるわけじゃない。彼女は全校生徒の憧れだ。たった2週間でいくつのファンクラブが作られ、争い、潰れていったか……。


とにかく、彼女は美人だ。俺は正反対な彼女の存在に、平凡な俺が関わっていいわけがない。彼女の青春という名のストーリーに、例え脇役であろうとも、画面端を歩くモブキャラでも、役者として名を残してはいけないのだ。


神宮寺 桜良、彼女とは住む世界が違う。

関わることなど一切ないであろう。


そう思っていたのに……。


なんでこんなことに……。

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