群馬で陰陽師、見つけました。

夢沢 凛

プロローグ

 静まり返った夜の前橋。車の音さえもしない街で、甲高かんだかく獣のような声が響いた。

 人の姿をしているようでしていないモノ。ビルの屋上に立ち、月の光に照らされてもなお、その姿は黒くもやがかかっているかのように黒い。そんな時、ふと人影が1つ眼下を通って行く。追おうと体重を移動させた時、自分の身体が動かないことに気がつく。


「この場所の元は仮にも城下町。そんな叫ばなくても結界の位置ですぐに分かりますよ」


 凛と響いたのは青年の声。


「あ、もしかして驚いてるん?そうさねー、まさか群馬に“陰陽師”がいるなんて、想像つきにくいから、驚くのも無理ないべ」


 建物の影になっていた場所から出てきた人影はまだ若い青年。しかし、彼が身につけているのは洋服ではない。

 ニコッと微笑んだ青年の姿はその外見とは反対におぞましさを感じた。

 逃げなくては、そう思うのに身体が上手く動かない。


「群馬にだって、陰陽師はいるんですよ?なにせこの場所は・・・色んなものを呼び寄せる土地、ですからね」


 次の瞬間、青年の足下に青い陣が現れ同時に自分の足下にも陣が出現した。


「− 滅 −」


 陣からいくつも光が伸びてきて、光が身体に巻きついていく。

 締め付けられていく中、モノ−妖怪は青年のあまりにも不気味な笑みに自ら目を閉じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る