第8話 夏至祭

 僕が東の街へ出てきたのは二十歳の時だった。あれから五年が経って記憶もだいぶ曖昧になった。誰だって過去の出来事を全部つぶさに覚えているわけではないのだから、僕の言う曖昧というのは、それとは少し意味が違う。あの西の町で生まれた男たちの宿命なのだと今では理解している。西の町の男たちは概して短命だった。死期が近づくと猫のようにぷいといなくなる。そして女は長命だった。「死の恐怖から逃れるために記憶が曖昧になるんだ」祐一郎は言う。そんな都合のいい解釈を信じるつもりはなかったけれど、自分の記憶が曖昧になっているのも事実だった。それに祐一郎は物知りだ。

 西の町は、東の街からずっと西の山あいにあった。西の町から出てきた人たちのコミュニティも、東の街にはあって、その人たちは生まれ故郷を『お山』と呼んでいた。最初は違和感があったけれど、その呼び方にも慣れてしまった。『お山』から、さらに西へ山を越えると寂れた漁村と海があった。それは地図を見て知ったことで行ったことはない。海の向こうに何があるのか僕は知らない。興味もなかった。

「西の果てには常世があって死と再生が営まれてるんだ」

 祐一郎は難しいことを言う。西は日が入る、ただそれだけのところだ。

『お山』は平地のない峡谷の町で、そこに住む人たちは山の斜面に切り開かれた狭い伝来の畑で、蕎麦や蒟蒻や馬鈴薯を作って暮らした。あるいは、渓流へと流れ込む幾筋もの細い沢の上流で、山葵を作った。山は植林された杉ばかりだった。それは林業が盛んだった頃の名残で、今では手入れをする人もなく荒れ放題になっていた。父の曾祖父の話でも、その頃すでに山は荒れていたということだから、林業が盛んだったというのは百年以上昔のことなのだろう。うちでも蕎麦と山葵を作っていて、物心のつく頃から手伝いをしていた。学校には通わなかった。通える範囲に学校はなかったし、入学の手続きもよく分からなかった。周りの子供たちも通っていなかったから、ことさら気にもしなかった。

 荒れ放題で保水力をなくした山は度々山崩れを起こした。東の街へ通じる谷あいの道と、鉄道に被害がなかったのは幸いだった。車を使う人の数が極端に減っても、電力不足で電車の運行が一日おきになっても、それらが大事な交通網であることに変わりはないのだから。

 家の裏庭から狭い谷越しに間近に見える山の上に、前世紀の遺物の巨大な電波塔があって、夜になると黒々とした影に、航空灯を赤く明滅させた。電波塔としての機能はとうになく、朽ちるのを待つばかりといった様子だ。裏庭に面した縁側で陽気のいい日なら戸を開けて、寒い時にはぴたりと戸を閉めて、僕はかごや平ざるをよく編んだ。荒れた山を浸食した竹があちこちで藪を作っていたから、材料はいくらでも手に入った。家にいて他にやることもない時、手遊びにかごを編み始めると、あっという間に時間が過ぎた。手が覚える仕事はいい。一心に編んでいる時、周りの暗さに気がついてふと目を上げると、巨大な電波塔の明滅している赤い航空灯を見ることになるのだった。

 何もせずただぼんやりと縁側に座っていることもあった。南に眺望の開けた裏庭の縁側は、時間が凝ったような昼でも薄暗い家の中で、外界へ開けた窓のようで、座っていると気が晴れた。それでも下へ目を移すとやはり時間が凝ったような、あるいは全体が午睡の中に微睡んでいるような、そんな町の姿を見るのだった。

 今でも思い出すのは、あの夏至祭の夜のこと。覚えたての酒を縁側で飲んでいた。蚊取り線香の匂いばかりが強く記憶に残っている。裏庭に不意に現れたサヤおばさんが、少し驚いたように僕の顔を見た。

「葉介君」サヤおばさんが興奮と疲労をない交ぜにした顔を上気させてつぶやいた。

 後ろの暗がりにかなめがうつむいていた。


 生まれてすぐに要は、東の街へ預けられた。僕が五歳の時だ。祐一郎の家の分家筋にあたる、尾上のおじさんのところだった。十歳になるまで要は、尾上のおじさんに連れられて戻ってきていたから、尾上のおじさんの顔は見知っている。物静かで今にも消え入りそうな薄い印象のおじさんだった。それは西の町で生まれた男に特有の印象だ。

 毎年夏至祭の前になると要は戻ってきた。夏至祭の前には町から出ていった多くの人たちが戻ってくる。その多くは東の街へ嫁いだ女たちだった。戻ってくる男もいないことはなかったけれど男の数が減っていたので、女ばかりが戻ってくることになるのだった。この町に限らず、どこでも男の数は減り続けていた。男は消え入るようにいなくなり、女は行方知れずになる。

「今年も確かにお届けしました」

 尾上のおじさんは、玄関で深々と頭を下げるとお茶も飲まずに帰っていった。麻の開襟シャツにニッカボッカのズボン姿で尻ポケットに扇子をつっ込んでいた。

 要が戻ってくると、祐一郎と三人でよく遊んだ。いつからそうしていたのかは、覚えていない。夏至祭の前後は畑仕事を休む習いだったので、時間を持て余していたのだろう。サワガニやクワガタを捕まえたり、山に分け入ったり、川へ下りたり、そんなことをしていたのだから、たぶん要が五、六歳になってからのことだろう。それ以前、まだ赤ん坊だった要を抱っこしたことも、あるようにも思う。

 要は十歳になる年に初めて一人で戻ってきた。その時僕は、うちの奥座敷で祐一郎とスイカを食べていた。玄関の引き戸を勢いよく開ける音がして「ただいまー」と、叫ぶような要の大声が聞こえた。

「あら、一人で来たの」

「ただいま、お母さん」

 騒々しく近づく足音が縁側に回り込み、障子を開け放してあった戸口から要が飛び込んできた。「ヨウちゃん! あ……」

 祐一郎の顔を見ると要はたたらを踏んで僕の背中にのしかかった。照れているのだ。

「こんにちは。ひさしぶり」

 祐一郎が言うと要は僕の背中に張りついたまま、小さな声で「こんにちは」と言った。小さな子供に対しても祐一郎は、子供扱いするようなものの言い方をしない。そのせいで要が萎縮しているわけではなく、戻ってきたばかりは毎年こんなふうだ。年に数日会うだけだから、一年経てばまた見知らぬ他人になってしまうのだろう。すぐに慣れて祐一郎にもべたべたと、まとわりつくようになるのも毎年のことだった。

「要、スイカ食べる?」

 顔を出した母に要は「いらない。遊びにいく」と答えた。期待に満ちた顔でこちらを見る。この年になると一緒に遊ぶというより子供の面倒をみる感覚になっていて、僕は億劫だった。

 祐一郎を見ると「どこに行く?」と言って立ち上がるところだった。

「年に一度のことだから甘えてきなさい。ユウちゃん、家の手伝いは?」

 遠慮のない母だ。大丈夫です、と祐一郎は答えた。

「息抜き。今年初めてやるから疲れちゃって」

 こうした祐一郎の応対を見るにつけ、如才ない奴だと思っていた。今思うと達観していたというのか、どこか浮き世離れした奴だった。代々神職の家系だからか。

「それならよかった。しっかり務めてもらわないといけないからね」

 要は僕の背中から飛び出すと祐一郎にかけよって腕をつかんだ。

「早く行こ」

「要、サヤおばさんにもごあいさつしにいって」母の声が背中から追いかけてきた。

 家を出たのが午後三時を過ぎていたので、遊びにいくといっても近くを散歩するだけになった。三人で歩くと、決まって要は真ん中に入って両手をつなぎたがった。散歩だけでも満足している様子だ。

「明日は川に行きたい」

「俺、明日は手伝い。葉介と行ってきな」

「僕も手伝いがあるよ」

「ユウちゃんとヨウちゃんと三人で行きたいのに……」

 僕も祐一郎も十五になったこの年から夏至祭の準備を手伝うようになった。母親のサヤおばさんが総代だから祐一郎の方が大変だ。男が少ないから仕切る役は自然と女になった。近親の縁組みが長く続いて正確には分からないけれど、たどっていけば町の人同士、どこかで血縁があるらしかった。なぜか女は皆一様に似た顔つきで年齢不詳の外見をしていた。うちの家も世話役として祭事にまつわる雑事の諸々を引き受けるので忙しくなる。仕方のないことだった。あと三年もすれば要も関わるようになるのだけど、そのことを要はまだ知らない。

「悪いな」祐一郎はこんなふうに子供にも対等な口のきき方をするのだった。

「手伝いが終わったらアイスでも食うか」おや、少しは気遣うこともできるらしい。

「かき氷がいい」

「ああ、そうしよう」

「あの、大っきなきかいで?」要は祐一郎を見上げ、少しだけ笑顔になった。

「そう。何味がいい?」

「いちご!」

「シロップがないな。明日、タカおじさんの店に買いに行こう」

「ヨウちゃんは青いのにして」

 こちらを向いて要が言うので「分かったよ」と答えた。

「自分で買えよ」祐一郎が言った。

 電波塔の向こうに見える真っ青な夏空に、峡谷を押しつぶそうかというほどの、巨大な入道雲がわき上がっていた。「夕立、くるぞ」祐一郎が言った。夕立は家までのあと少しの距離を待ってくれなかった。遠雷が立て続けに聞こえ始め、近づいてくると、空はあっという間に黒雲に覆われた。間を置かず、腕や顔に当たると痛いくらいの大きな雨粒が落ちてきた。雨に打たれながら道沿いの階段を上って杣入りのお堂にかけ込んだ。

「ちょっと雨宿りだな」と要に言って祐一郎はお堂の縁側に腰かけた。その隣に要が座った。何やらうれしそうだ。僕は立ったまま薄墨色に変わってゆく風景を眺めていた。雨樋のないお堂の軒端から、とうとうと雨水が流れ落ち、その下の地面を穿った。薄い水のカーテンがひかれたように谷越しに見える山の風景が霞む。縁側に座って足をぶらぶらさせていた要が、ひょいと飛び降りて縁の下に潜り込んだ。まったく子供というのはじっとしていない。

「何してるんだ?」僕は縁の下をのぞき込んだ。

 要はかえる座りで地面をじっと見ていた。

「ああ、アリジゴクか」祐一郎も要の隣にしゃがんだ。

 そういえば昔、ここで遊んだことがあった。要は飽きもせず、庭の隅でアリを捕まえては、アリジゴクの巣穴にアリを放り込んでその様子に見入っていた。力の加減を誤って指先でアリをつぶしてしまうこともあった。

「この雨じゃ、アリも捕まえられないな」僕が言うと

「アリジゴクはウスバカゲロウになるんだよ」と要は言った。

「ウスバカゲロウはすぐに死んじゃうけど、アリジゴクは土の中に二年もいるの」

 東の街で学校に通っているだけのことはある。

「物知りだな」僕がそう言った時、要の興味はもう他に移っていた。

 雨だれ落ちをじっと見ている。

 軒端の下は雨だれに穿たれた溝が、軒下に沿って一直線に伸びていた。溝には土に埋もれていた小石が顔をのぞかせていた。

「かわいいね、まん丸で」要が言った。

 溝から顔をのぞかせている小石もまた、雨だれに打たれて角が取れ、丸くなっているのだった。要が小石に手を伸ばすと、その小さな手を大粒の雨だれがたたいた。

「これがユウちゃんでこっちがヨウちゃん。私はこれ」溝から拾い上げた小石を三つ、手渡された。手渡された小石は、ちょうど握り込めるくらいのまん丸な黒っぽい石で握り心地がよかった。

「顔みたいだな」祐一郎が言った。

 なるほど、祐一郎が手渡された石は僕のよりもう少し縦長で白っぽい。瓜実顔で色の白い祐一郎の顔のようでもあった。要が持っているのは、僕が手渡された石よりひと回り小さくて、まん丸ではなく玉ネギか栗のような形だった。

「そうなのか?」僕が聞くと「うん、記念に」と要はうなずいた。

 どこでそういうことを覚えるのか。やっぱり東の街で、学校なんかに通っているからだろうか。

「そうか、記念だな」祐一郎が言った。

「明日タカおじさんのお店、行こうね」要が言った。

 翌日、僕は要を連れて川へ下りた。その後、祐一郎も加わってシロップを買ってかき氷を食べたことも覚えている。そんなふうに三人で遊んだ夏至祭はこの年が最後になった。僕も祐一郎も、祭事の手伝いで時間がとれなくなったのだ。祐一郎は手伝いばかりでなく、見習い程度だったけれど実際に祭事を執り行うようにもなっていた。僕も世話役の家の人間として母の仕事を手伝った。翌年に戻ってきた要は「つまんない」と不平を漏らした。けれど、その年以降は何も言わなくなった。虫捕りや川遊びが、楽しい年でもなくなったのだろう。だからといって何も話さないわけでもない。家で一緒に食事もするし祐一郎と行き会えば立ち話もした。

 でも要が十三の年に戻った時は様子が違った。口数が少なく、むっつりした応対だった。この年くらいの女の子はこんなものなのだろうと僕は気にもせず放っておいた。

「葉介」滝で祭事の準備をした帰り、祐一郎と歩いているところへ、山から下りてきた父に声をかけられた。「今日獲れたシカ、今バラしてるから」

「分かった。もらってくるよ。タツおじさんのところ?」

「おう、頼む」

 言い置いて父は家の方に歩いていった。仕掛けた罠を見回りに、父とタツおじさんは朝から山に入っていた。獲れた獲物を山から下ろすと解体はタツおじさんにまかせる。父は家に帰ってひと風呂浴びるつもりなのだろう。いつもそんな役割分担になっていた。

「俺も行くよ」祐一郎が言った。

 タツおじさんがいつも獲物を解体する、家の裏手へと回り込んだ。近づくにつれ濃い血の匂いが鼻をついた。

「よう、来たか」ちらりと顔を上げ、作業の手を止めずにタツおじさんが言った。

「こんにちは」祐一郎が言うとタツおじさんは手を止めてこちらを見た。

「祐一郎も一緒か。ちょうどいい、骨持ってってくれ」

「肉もください」祐一郎のいつもの軽口だ。

「そういう意味じゃねえよ」タツおじさんがおかしそうに言った。

 目の前の柿の木の太い枝に、後ろ足を縛られたシカが逆さに吊り下げられていた。血抜きされ内蔵も除かれ、腹には暗い穴がぽっかりと空いている。首まで皮を剥がれ、真っ赤な体に白く薄い脂がまとわりついている。まっすぐに伸びた二本の後ろ足は、尻と太ももからふくらはぎへと流れる曲線が、人のそれのようで艶っぽかった。しゃがみ込んで頭をいじっていたタツおじさんは、頭と首の境目あたりにナイフを差し込むとその刃をぐるりと一周させて頭をはずした。

「タン、食うか?」タツおじさんが頭を持ち上げた。頭の皮は剥がされていなかったので、シカの顔そのものの大きくて真っ黒な瞳が僕を見た。その時、僕は柿の木の向こうに要がいることに気がついた。要は杉を切り出した丸太に腰かけて、杖をつくように持った止め刺し用の鉄パイプにあごをのせ、ぼんやりした顔をしていた。

「ああ、ヨウちゃん……とユウちゃん」

 覚束ない声に僕はびっくりした。

「お父さんとタツおじさんに行き会って、シカをかついでたから、それでついてきて、見せてもらってた。逆さに吊されて皮を剥がされるところから」

 同じ口調で続けた。ぼんやりした顔に見えたけれど、目は一心にタツおじさんの手元を追っていた。タツおじさんは、前足の付け根に差し入れたナイフを左右に動かしていた。ほどなく前足をはずすと、もう片方の前足、後ろ足と順番に手慣れた作業をこなしていった。肉の塊となった胴を作業台の上に置いたところで要は大きく息を吐いた。

「今日、滝を見てきたよ」

「どうだった?」祐一郎が聞いた。

 要は作業台の上で背骨に沿って肉をはずし始めたタツおじさんを眺めている。

「滝の下の淵が鏡みたいにしんとしてて、真ん中にまん丸の岩があって、水が青くて手が染まりそうで、でも底の石まで見えて」

 ぼんやりと夢見るようにしゃべる。

「魚が何匹もいたよ。底でじっとしてた魚が急に動きだすの。一直線につーって。一匹動くと周りの魚も次々につーって。青白く光って星が流れたみたい」

「山女魚だよ」僕は言った。

「山女魚はうまい。岩魚や鱒なんかより俺は好きだな」祐一郎が言った。

「ユウちゃんはそういうことばっかり」要が笑ったので僕は少し安心した。

 背骨、胴の内側、あばら、首周り、取れるだけの肉をはずしてしまうとタツおじさんは、小分けにした肉を油紙に包んで手渡してくれた。

「親父さんが酒だけ用意して待ってるだろ」

「日が暮れるまで飲まないって言ってます」僕は言った。

「えらいな」タツおじさんは前足の一本を、丸のまま祐一郎に手渡した。

「バラすのは家でやってくれ」

「今年は俺がやります」

「――そうか、十八になったのか。よろしく頼む」

 タツおじさんがそこだけ真面目な口調になって言った。

 帰り道は要を真ん中に三人並んで歩くことになった。さすがに手はつながなかった。

「駅の下の道沿いにコンクリの建物があるでしょう。二階建ての。あれ、何?」

 要が言った。要がどの建物のことを言っているのか、すぐに思い当たった。この辺りにそんな大きな目立つ建物は他にない。けれどその建物が何だったかすぐに出てこなかった。

「図書館」祐一郎が答えた。そうだ図書館だ。僕には縁のない場所だ。

「図書館、なんだ」要がつぶやいた。

 東の街で学校に通っている要は本を読んだりもするのだろう。

 要が「行ってみたい」と言ったから、三人で図書館に行った記憶はある。それがこの年だったか、この翌年だったか記憶が曖昧だ。十三の年に要が初めて沐浴した。夜、家に迎えにきた祐一郎と連れ立って家を出た。帰ってきたのは夜半になってからだった。翌日、要は昼まで寝ていたから図書館へ行く時間はなかったと思う……いや違う。この翌年、要は戻ってこなかったのだ。だから図書館へ行ったのは、この年のはずだ。そうだ、今日要が東の街へ帰るという日の午前中に行ったのだ。

 駅までの山道を下りてホームの脇の警報機のない踏切を渡ると、谷あいを走る道に突き当たる。あまり使われることのない道は、アスファルトがひび割れ、ところどころに穴も開いている。けれど補修のための手続きは誰も知らなかった。

 図書館へ向かって歩くと、左側の谷沿いに廃屋が二軒並び、その先に屋根と壁のない、錆びついた骨組みだけが残った、建物の跡が続く。昔は製材所だったそうだ。図書館の手前にタカおじさんの店がある。店先に軽トラが停まっていた。東の街で仕入れた、生活の細々したものを売っている雑貨屋だ。缶詰、酒、ろうそく、線香、麻紐、軍手、乾電池……。かき氷のシロップを買ったのもこの店だ。通りがけに店の中をのぞき込むと、奥の引き戸が開け放してあって、座敷に伸びるすね毛の濃い二本の足が見えた。タカおじさんが昼寝しているのだろう。くすりと笑った気配に振り向くと要が笑いをかみ殺していた。僕と目が合うとすぐに笑いをたくし込み、分別くさい大人びた顔をした。この年頃の女の子は愛想よくすることにも、むっつりしていることにも力を使うのだろう。いや、女に限ったことでもないか。自分を省みてそう思った。

「また崩れてるな」前を歩く祐一郎が谷底をのぞき込んで言った。谷向こうの山の、川に近い斜面が少しえぐれていた。山崩れが頻繁に起きるので小さな崩落くらいでは誰も騒いだりしないのだ。電波塔は大丈夫だろうか。土台から崩れたらさすがに大変なことになる。「大丈夫かな?」思ったことが口をついて出た。

「電波塔自体が先に崩れるかもな」祐一郎も同じことを考えていたらしい。

「街も『お山』も同じ雨が降る」要も電波塔を見上げていた。

「水素イオン濃度の高い雨」

「何言ってるんだ、要は」

「さあな」祐一郎が笑った。

 図書館は入り口が開け放してあった。遠目には堅固に見えた建物も外壁はいたるところがひび割れ、長年の風雨にうす汚れていた。入り口からすぐのところにカウンターがあって、右手に二階へ続く階段が見えた。階段にはロープが渡してある。入るなということなのだろう。要はここへ来ていったい何をしたかったのか。入り口に立ち尽くしていると「あれ?」と声がして、図書館の館長をしている川名氏が、大きな竹製のかごを背負って図書館の裏手から現れた。よいしょ、と言って背負いかごを下ろす。背負いかごには本がたくさん詰まっていた。「閲覧希望かい?」と言ったけれど本気で言っているわけではなさそうだった。

 川名氏は外の人間だ。僕が生まれる前のことだけれど、当時この図書館の管理をしていた女のところへ婿養子として入った。外の人間だということは見た目で分かる。眉毛が濃くぎょろっとした目で、でっぷりと太っているから、というだけでなく、旺盛な生命力に溢れているから。この町の男に特有の今にも消え入りそうなはかない印象がない。七十に近い年齢のはずだ。そんな長命の男は西の町にはいない。

「こんにちは」祐一郎が言った。

「ああ、沢渡さんとこの。先日はご苦労さんでした」

 首にかけたタオルで額の汗をぬぐう。

「そっちは、鳥飼さんとこのせがれか」僕は軽く頭を下げた。

「じゃあ、その子が……」

「要です」祐一郎が紹介すると要も表情を固くして少し頭を下げた。その顔を川名氏はじっと見据えた。

「どうしたんですか、この本」祐一郎が聞くと

「上の住職さんのとこからね、もらってきたんだよ」何冊かかごから取り出して見せてくれる。祐一郎と要は、たぶん読めるのだろう。僕は地図や図鑑の類しか開いたことはなかった。

「虫干ししたいけど、今時季じゃないから。一旦二階に保管して秋口にやることになるかな」言いながらまた本をかごにしまった。

「本を読む人も、もう少ないでしょう」祐一郎が言った。

「今はただ保管してるだけだ。それが大事さあ。先のことは分からんし。それにお役目だ」

 僕は祐一郎と川名氏の会話を所在なげに聞いていた。祐一郎は時々何かの調べ物で図書館に来ていたらしいから川名氏と気さくに話せるのだろう。

「要ちゃんも大きくなって」川名氏が不意に言った。

 急に名前を呼ばれて、その瞬間要が身を固くしたのが分かった。要は小さく「はい」と言った。うつむき加減で上目使いに川名氏を見る形になったので、不躾に思われないかとひやひやした。川名氏がぎょろりとした目でじっと見るので要はますます身を固くする。

「沐浴はうまくいったかね」

「いえ……あ、はい」要の緊張が伝染したように僕まで固くなる。何か話そうと思うのだけど祐一郎のように世間知に長けていない僕に、それは困難だった。

「滞りなく。本番も問題ないですよ、きっと」祐一郎が如才なく答えた。

「それなら安心だ」と言った川名氏の言い方は、どこか投げやりに感じられた。

「それにしても先代の要さんによく似てきた」

「そうですか。俺は知らないんです。写真もないし」

「もう三十年くらい前になるか」

 自分の名前が出たので要がまた身を固くした。僕は何のことやら頭が回らず、ただぼんやりと要の隣で所在なげに立ち続けていた。

「三十年ぶりの西の女か」川名氏がつぶやいた。


 翌年、要が戻ってこなくて二年ぶりに会った夏至祭。その時、僕は二十歳で要は十五歳だった。そうだ、だから僕はあの夜も酒を飲んでいたのだ。要は尾上のおじさんと一緒に戻ってきた。尾上のおじさんの運転する車で来たという。尾上のおじさんは、めずらしく上がりこんで母と話をしていた。奥座敷で麦茶を飲んでいた僕と要のところまで時折、母の上げる甲高い笑い声が小さく聞こえた。

「車、どうしたんだ?」

「知り合いから借りたって。燃料込みで」

 要は明るく言った。二年前のむっつりした、とりつくしまのない感じはもうなかった。ああいうのは一過性のものだと思ってはいたけれど、あまりの変わりように僕はびっくりした。僕の前でくるりと回り、着ていた真っ白なワンピースの裾を、なびかせたりもしてみせたのだ。

「化繊のワンピースは肌にひやりとしていい気持ち。古着屋で買ったんだ」

「今や化繊の方が貴重品だな」

 変わったのは態度ばかりでなく背もずいぶん伸びていた。そのせいか面長になった顔が大人びて見えた。元々細身だった体が縦に引き伸ばされて、細長い枝のような手足が華奢な少年を思わせた。あごのあたりで切りそろえていた短い髪は背中まで伸ばされていた。

「今日はどうするんだ?」

「川に下りてみる。後でサヤおばさんとお茶飲みするよ。約束してるんだ」

「一人で下りられるか」

「運動神経はいい方なの、私。実は」

 要はちらっと舌を出した。その様子は妙な浮かれ方をしているように感じられた。明るくなってよかったと思ったのは見立て違いだったか?

「ありがと。心配してくれて」要は言った。

「夜、滝に行こうよ。ユウちゃんと三人で」

 毎年夏至祭の前日にやることは決まっている。だからあの年もきっと同じことをしていたのだと思う。準備はあらかた終えていたはずだ。前日の主な仕事は、祐一郎と滝に行って淵の真ん中に突き出ている岩の掃苔だ。藁のたわしでこする。二人で抱えきれないほどの大きさで、水に突き出ている部分がほぼ球形のまん丸だ。祭事のための大切な岩だそうだ。深さは二メートルほどか。水につかっての作業だし、滝の起こすわずかな風もあって涼しい。一時間ほどで作業を終えると泳いだ後のような疲れが残った。体全体がだるくて物憂いような、そんな気分で滝から戻ってきた時に要に会ったのだ。

 要は、杣入りのお堂の縁側にサヤおばさんと並んで座っていた。

「おーい」こちらに気づいた要が手を振った。反対の手にはいなり寿司を持っている。道から階段を上ったところにあるお堂は、こちらからは見上げる形になる。酒瓶が置いてあるように見えるのは気のせいか。お茶飲みと言っていたけれど。

「要にあまり飲ませないでくれ、母さん」

 祐一郎が言った。見間違えじゃなかったか。

「いや、だめだろ」

「いいんだよ御神酒だから。それに強いよ要は」

 そうだ、祐一郎はこういう奴だった。何で要が酒に強いと知っているのか。

「ひと風呂浴びたら俺たちも飲むか」祐一郎が言った。僕は酒を覚えたばかりだったけれど、祐一郎の飲み方は堂に入っている。

「俺は立場上つきあいがあるから」と、よく言っていた。一体いくつの時から飲んでいるのか。

「後で行くよ」と言った祐一郎を見送って、僕は自分の家に帰った。

 風呂上がりに、なかなか来ない祐一郎を待ちきれず、縁側の引き戸を開け放ち僕はそこで酒を飲み始めた。蚊取り線香も忘れずに焚いた。夏の夕暮れにここで飲むことが習いになり始めていた。つまみに、裕一郎からもらったサヤおばさんが作ったという麦味噌とぬか漬けを用意した。夏至祭前夜だから両親とも寄り合いに出ていて家には僕一人だった。巨大な電波塔の航空灯が赤く明滅している。要はどこに行ったのだろう。あのままサヤおばさんと一緒に祐一郎の家に行って、夕飯をふるまわれたりしているのだろうか。いや酒を? タカおじさんの店で買った酒は舌にしびれるような味だった。あまりうまいとは思わなかったけれどクセになる味だ。僕が麦味噌をなめながら二杯ほど飲んだところで、裏庭に祐一郎と要が現れた。

「待たせて悪かったな」さして悪びれもせず祐一郎が言った。

「ヨウちゃんー」要が祐一郎の後ろから飛び出してきて、その勢いのまま縁側に両手両膝をついた。僕の目の前だ。「滝に行こ!」

 飲ませたのか? という目で見ると祐一郎は眉根を寄せてうなずいた。まあ、いいのだろう。御神酒だし。夏至祭だし。「分かったよ」と言って僕は立ち上がった。

 杉木立の奥へ続く細い山道を並んで歩いた。要が僕と祐一郎の間に入って手をつないできた。「暗くて道がよく見えない。怖いよ」

「そうか?」僕は要の手を握り直した。子供の頃と変わらない華奢な手だった。

「星明かりでよく見えるよ」祐一郎の言葉に要は夜空を見上げた。夜空は高くそびえる杉の木の間からわずかに見えるだけだった。

「『お山』で暮らしてると夜目が利くようになるんだね。びっくりだよ」

「今日は新月。その新月もさっき沈んだ」祐一郎が言った。

 要が握る手にぎゅっと力を込めた。その時、要の体から甘い匂いがただよってきた。いつまでもまつわりついて鼻につく不思議な匂い。ああ、これは……酒の匂いか。しばらくして僕は気がついた。

 幾筋もの沢にかかる橋を渡り、山襞に沿ってつけられた曲がりくねった細い山道を歩いた。少し下り加減になるところで右に曲がると水音と伴に滝が現れる。地形のためか曲がるまで不思議に滝の音は聞こえない。正面に滝がありその手前が淵になっていて、淵にせり出した岩で道は行き詰まる。滝を望む露台のような格好の岩だ。左右は切り立った崖で、崖についた苔は滝のしぶきを含んでしっとりと濡れている。さして落差のある滝ではないけれど、雨の多い今の時季は水の量が多い。落ちる水がわずかに起こす風がひんやりと顔に当たる。崖の上にはブナやナラの雑木があって、植林された杉ばかりの不愛想な山に、この場所だけ表情があるようだった。大きな栗の木が一本、葉の茂った太い枝を淵の上に伸ばしていた。それらの木々に丸く縁取られた淵の上には、ぽっかりと夜空が見える。

「わあ」要が見上げて声を上げた。

「ホントだ。いつもより明るい。星が多い」

 要が見上げる夜空を僕も見上げた。いつもより星の数が多い気がした。いや多いのではなく、一つ一つの星の瞬きが大きくなったように見える。雫となって軒端から落ちる寸前の雨だれのように。瞬くたびに青白い光に重みが増すようだった。滝と淵と、その周りの空気が星明りの薄い青に染まる。

「ホントだ」と僕も言った。日頃しっかり夜空を見上げて、星を眺めることなどないのだけれど、要に調子を合わせたわけではなく、本当にそう思った。

 真ん中に立っていた要がつないでいた手を離し、ついと前へ進み出た。岩の鼻先に立って夜空を見上げる。つられて僕も要と同じ視線の先を見た。

 その時、わずかに衣ずれの音がした。視線を戻すと要の足下に、要の着ていた白いワンピースがわだかまっていた。要の固そうな背中と腰が、星明かりに青白く照らされている。白磁の花器のようだ。思わず一歩踏み出した僕を祐一郎が制した。

「この先は神域だ」

「昼間入ったじゃないか」

「一時間前から神域になった。新月が沈んだから」

 祐一郎が真面目にものを言うのはめずらしい。

 要はスキップするように岩の先をとんと蹴って足から淵に飛び込んだ。小さくしぶきが上がって、真っ直ぐに水底へ沈み込む。その瞬間、夜空から青白い光が一つ流れ、要をめがけて落ちてきた。要に糸が結わえつけられていて、その糸に引っぱられたように。落ちた光は水底で、光る山女魚に変わり要の足下を照らした。僕は夜空を見上げた。見上げた夜空の星々は、光る重みに耐えかねて細かく身震いすると一つまた一つと要をめがけて降ってくる。要は水底を歩いた。長い髪が水草のようにゆらゆらと水面を揺蕩う。次々に落ちる光の雨が水面に波紋を作った。沈んだ星は水底で、光る山女魚になって要の足元をついて泳ぐ。光の群れを引き連れて要は水底を歩いた。光の長い帯を引いている。山女魚の放つ白い光で周囲の薄青い空気が、わずかに暖かみを帯びた色になる。ひざのあたりにまで群がった無数の山女魚の放つ光は、要のわずかな起伏に蒼い翳りを作った。

 時間が際限なく引き伸ばされてゆく。

「ふうー」

 要が大きなしぶきを上げて水面から顔を出した。淵の真ん中に突き出た岩に両手を回して抱きつく。あるかなしかのふくらみが岩に押しつけられてつぶされた。肩で大きく息をしてあえいでいる。要はもう一度大きく息を吐くと「苦しかった」と言った。僕はその瞬間我に返った。水の中では息が続かない。人間なら当たり前のことだ。僕は違った場所の違った時間の光景を見るように、水底を歩く要を眺めていた。その時間が永遠に続くような錯覚をしていたのだ。要が岩に抱きついているうちに、山女魚は一匹また一匹と要の足元を離れ、光の尾を引いて川下へ泳ぎ去った。山女魚がすっかりいなくなると淵はまた星明かりの薄青さを取り戻した。

「明日の夏至祭、ヨウちゃんは立ち会えないでしょう。だから見せておこうと思って」

 要は器用に岩をよじ登り岩の上で膝立ちになると両手で髪をかき上げた。岩は滝から見下ろされる位置にある。両腕をだらりと下げて顔を上げ、背中を反らし、要は滝と対峙した。濡れた黒い髪が青白い背中に張りついている。その様子に僕はふと献花という言葉を思い浮かべた。

「また星が降るよ。ほら」

 流れた一筋の青い光が、要の眉間でくだけた。


 だからあの年の夏至祭の夜、裏庭に不意に現れたサヤおばさんと要を見ても、僕は驚かなかった。そんな気がしていたのだ。ただサヤおばさんの右手に握られた鉄パイプを見てぎょっとした。

「要ちゃんを連れてって、早く」下で尾上のおじさんが待っているという。そう言い置いてサヤおばさんは取って返した。僕は「行こう」と言って要の手を握った。

 駅まで下る曲がりくねった細い山道を僕は要と手をつないで急いだ。谷向こうの山の上に電波塔の航空灯が赤く瞬いている。星明かりに不慣れな要の足取りは覚束ない。昨日の元気が嘘のように要は口数が少ない。はしゃぎ過ぎた反動か。それとも成り行きでこんな状況に陥ってしまった不安からだろうか。気が急いていた僕は要を気遣う余裕もなく黙々と要の手を引いた。

 駅の脇の警報機のない踏切を渡る。突き当たる下の道に車が一台停まっていた。

「ヨウちゃん」それまで黙っていた要が口を開いた。

「これでよかったのかな」

「いいんだよ。祐一郎だって賛成したんだろ」

 車のドアが開き尾上のおじさんが片手を上げた。

「大丈夫かね?」のんびりした口調で言った。

 ああこの人も、もうすぐ死にそうだ。

 車に乗り込んだ要が窓を開けた。

「ありがとう、ヨウちゃん。ユウちゃんにもそう伝えて」

 僕は道端に立ち尽くして走り去る車のテールランプを見送った。

 車を出す間際「今生の別れだよ」と尾上のおじさんが言ったことを覚えている。


 翌年、僕は東の街で暮らすことになった。紡績工場で工員として働いている。夜学にも通い始めた。今さら勉強もないものだ。

 夏至祭前夜、滝からの帰り道を歩きながら祐一郎が語ったところによれば、先代の要というのはサヤおばさんの姉さんのことだそうだ。

「要という字は西の女と書くけれど、本当は神女という字を当てるんだ」

 その名前をどうして僕の妹が受け継いでいたのか不思議だった。要の本当の母親がサヤおばさんだからではないか、とも考えた。けれどそれは僕の妄想の域を出ない。

『お山』に比べれば人の数は幾分多いようだけど、ここでも人の数は年々減っている。目にする景観が無愛想な山から古びた建物に変わっただけで、凝った時間が澱んでいるところは変わらない。

『お山』のコミュニティに顔を出す度に人の数は減っている。誰がいなくなったのかはよく分からない。女は皆一様に似た顔をしているし、男の持つ印象ははかない。それとも、分からないのは僕の記憶が曖昧になっているからか。記憶というと少し違うように最近感じ始めている。時間の感覚が希薄になった、と言えば僕の感じ方に近い気がした。

 今でも夏至祭には『お山』へ戻る。何事もなかったように僕は祐一郎と、淵の岩を掃苔する。あの時以来サヤおばさんの姿を見ない。

 うちの縁側で祐一郎と酒を飲むようになった。祐一郎は麦味噌とぬか漬けを持ってくる。僕は山葵漬けと、あればシカ肉をふるまう。酒は多少強くなった。裕一郎がいつから酒を飲んでいたのか、まだ聞けずにいる。

 飲んでいると夕立があることも多い。そんな時、軒端から落ちる雨だれを、祐一郎と眺める。雨だれ落ちの細長く穿たれた溝に、角の取れた丸い小石がいくつも転がっている。その中に、かつて供物になった女たちの顔がのぞくような気がした。

 いつまで要のことを覚えていられるだろう。

 僕はそう思って、酒を飲みながら泣いた。

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