第6話 捧げる歌

このひかりを、胸に灯されたひかりを

なんと呼ぶのだろうか


すべてが優しいとは言えない世の中で

僕らはひかりをひと時共有する

安堵の溜息と祝福の言葉が宙を飛び交い

君という生命を祝福した葉桜の季節


曇天を晴らして蒼天をつかんで


いつしか


そのとき、その場所に

生まれてきたことに

君は怒りを感じるだろう


逆巻く感情の渦の中で思うさまに

動けないもどかしさが君を襲って

まるで予定調和のような繰り返し


けれど忘れないでほしい


葉桜の季節、天地は春の陽気に

すべてを捧げて

精一杯の愛と呼ばれる抱擁で

君の産声に答えた

父よ、母よ、兄よ、姉よ、と呼び合える

かけがえのない絆が結ばれたんだ


いつしか


そのとき、その場所に

生まれてきたことに

君は喜びを感じるだろう


ただひとりで道を行き、孤独と喪失感に

倒れた視線の先に咲いた花に陽が差して

束の間の永遠が立ち現われる


時間も空間も超えて君が生まれときに

この世界にひと時満ちた祝福と繋がる


僕らはそれをなんと呼ぶのか

やはりひかりと呼ぶのか

君が懐いたひかり


誰もが去りゆくけれど来る人もいる

僕らは絶え間なくひかりを灯し続け


曇天を晴らして蒼天をつかんで

生命が伝導していく


この祝福の日に春雷が鳴る

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