4-2

 適当に着替え、スマホをポケットに突っ込んだ。

 玄関で靴を履いていると後ろから姉貴が階段を降りてくる。

 よく寝たんだろう。表情は明るい。

 俺は少し安心した。

 姉貴は俺を見ると少し顔を赤くした。

「えっと・・・・・・。昨日はごめんね?」

「別にいいよ。慣れてるから」

 俺が靴紐を結すびながらそう言うと、姉貴は困ったように笑った。

「あはは・・・・・・。そっか。もしかして、ベッドまで運んでくれたのって涼君?」

「そうだよ。多分父さんが持ったら腰を悪くするな。お前、ちょっとは痩せろよ。絶対着れなくなった服とかあるだろ?」

 姉貴は慌ててお腹を押さえた。

「ど、どうしてそれを・・・・・・。はい。気をつけます・・・・・・」

 姉貴はいつになくしおらしくなった。

 靴紐を結び終わると俺は違和感を感じながらも立ち上がった。

「またお出かけ?」

「うん。そこの公園まで行ってくる」

 俺は右の方を指差した。

 姉貴はふ~んと変に興味を持っている。

「美鈴ちゃんと?」

「・・・・・・いや、神村と。すぐに帰るから鍵はするなよ」

 姉貴はこくんと頷くと、ばつが悪そうにしながら尋ねた。

「えっと・・・・・・、あのね? 一つだけ聞いていい?」

「なに?」

「・・・・・・昨日ね? 涼君・・・・・・わたしと・・・・・・その・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 姉貴は顔を赤くして後ろで手を組んだ。中々次の言葉が出てこない。

 急いでいた俺はイライラしながら待っていた。

 まだ時間はあるけど、なるべく先に行っておきたい。遅れて行ったらどんな文句を言われるか分からないからだ。

「なんだよ? 早く言えよ」

 俺が急かすと姉貴は横を向いて意を決したような顔になり、そして恥ずかしそうに言った。

「エッチなことしなかった?」

 俺は呆然とした。

 こいつは何を言ってるんだ?

 エロゲのやりすぎでとうとう頭がおかしくなったのか?

 俺はあまりにも驚いていたんだろう。姉貴は俺の顔を見て、手を横に振った。

「ち、違うの! 昨日の記憶が曖昧で。ほら、お酒飲み過ぎちゃったから。・・・・・・けど、その、断片的な記憶によると、涼君があたしの、胸を揉んで・・・・・・、押し倒して・・・・・・、起きたらベッドだったから・・・・・・。まさかって思って・・・・・・」

 胸を押しつけてきたのは姉貴だし、引き倒したのも姉貴だ。

 挙げ句の果てに善意で二階まで連れて行ってやったのに、俺がよからぬことをしたと?

 こいつの脳細胞はアルコールで焼き切れたのか?

 俺はただ口をぽかんと開けていた。

 呆れた。呆れ果てていた。

 俺は地球上で最もデカイ溜息をついてから、

「お前、病院行って脳みそ洗ってもらえ」

 俺はそれだけ言って家を出た。

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