春はまだ青いか

新吉

第1話 夏はまだ甘いか

「ブルーハワイとレモンください」



 かき氷は、冷たくておいしい。

 夏は、暑くて暑くて暑い。



「ねえ青くなってるんじゃない?」


「気にしない」



 うちはかき氷はたいていレモン味。理由は甘ったるいのが苦手で、他のよりサッパリしてる気がするから。こいつはたいていブルーハワイ。あんなに赤い舌が青くなるのが苦手で、うちはあまり頼まない。自分じゃ見えないからいいんじゃない?と彼は言う。



「うちには見えんのー」


「見なきゃいいだろ」


「あんたが見せてくんでしょーが」



 舌を出して笑う友だち。そういい友だち。自分に言い聞かせる。こないだのお祭りでこいつを見かけた。隣には女の子がいた。その子はイチゴで、こいつはブルーハワイ。さっきみたいに楽しそうに笑ってて。


 裏切られたような気持ちと急に遠くに行ってしまったような気がしてならない。今は隣にいるのに、手が届くくらい近いのに。このまま知らない誰かになって、消えてなくなってしまう気がした。それこそ氷のようにじわじわと溶けて水になって空にのぼっていく。


 しゃくしゃくとストローで氷を崩して、溶けていくかき氷を食べる。ああ、冷たい。私の中に落ちてくるつめたさに、このまま中から凍らせてくれないかなあと思う。こんな暑い夏にこんな想いでいたら、熱すぎて倒れてしまう。



 あつすぎてくるってしまう

 見上げた空はとっても青くて

 どこまでも青い空が世界を覆っている

 あおすぎてくるってしまう

 私もそのまま青くなりそう



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