第3話

5。『いや、まだ異世界であるという確証は…。』



よう。

俺だ、そして……街だ。



えーと、中世ヨーロッパっていうのか…。


そういう異国情緒溢れる街並みが、逆さに流れて行く…。



相変わらず俺は、逆さ吊りにされてるよ。



……結構な人混みだ。


バザーか何かの中を、

ショートカットしているみたいだ。


正直、滅茶苦茶…他人に当たるし、揉みクチャにされる。


何か、興味を持った子供が…。

俺のプリティヘッドを鷲掴みにして来て、

危うく首がもげる所だった。


「……………………」



まあ、それは置いといて…。


この地域…というか世界が、異世界である事が…決定したようだ。


先ほど俺に、無礼を働いた子供もそうだが…。



…けもミミが、生えていた。


あの耳元の動きは、リアルだった…。

リアル けもフレが…ここにはいる。


そして、その辺りを獣人系だけじゃなく…他の種類の亜人達も、平然と闊歩している。



そして、俺を担いでスタスタ歩く彼女…。

ローテ嬢もその辺りの事実関係に驚く気配がない。

逆に、知合いか何かに笑顔で挨拶したり、されたりしている。



そんな衝撃的な事実を、逆さのまま知った俺とローテは、ある建物の前で止まった。


まあ俺は、連れ回されてるだけだがな…。





『民泊:阿蘇屋』



………はあ?!



…か、漢字!?

それも何で…日本語表記なんだ?



………そう言えば、ローテとは会話出来てたな…。


え?なに?

…どゆ事どゆコト?

ここ、やっぱ異世界じゃないの?!

…………日本のテーマパークか何かか?


じゃあ。

このぬいぐるみの身体は、何だ!

着ぐるみじゃないんだぞ?


正真正銘のぬいぐるみだぞ!



…………えーと。待て待て…。


状況を整理しようじゃないか。


……………いきなり山の中の洞窟内で目覚めて?


…………日本人としての見識は保っていて?


………身体はぬいぐるみで?


……鬼みたいなビキニアーマーが存在して?


…ケモ友がいて?


日本語圏?


…………………………結局、分からん。








6。『主人公は〈空腹耐性?Lv.99〉を取得した!………要らないから。』



さて…宿屋に入るみたいだ。


ジャパニーズホテル?…それともINNか?




ガラガラー……。


………て、引き戸かよ?!


どんだけジャパナイズされてんだよ!



だがまあ日本式とは言え、風情も何もない『民泊』だ。


老舗の純和風旅館や割烹料亭とかじゃないみたいだしな…。



でも…。


食事が出来る民泊みたいだな。

食堂みたいに木製の椅子やテーブルが10式くらいある。


飯食ってる奴は……いない。


まあ、昼は大分回ってるみたいだからな。



………そう言えば俺。

結構な時間、逆さに揺られて連行されて来たのに…。


空腹を覚えないのだが…。



これって特殊スキルとかチートに含まれんの?



主人公は、スキル『空腹耐性』を取得した…。

……てヤツ?



……………………………要らね-わ!



どう使うと?! どー使えと!!


………ソシャゲでの課金優先生活、とかか?


……買いたいラノベやゲーム代浮かせに、

親から貰った弁当代チョロまかす時………とか?


……………あ…女性取得者には喜ばれるかもー。

………ダイエットとかにー。


……子供にも…好かれるかもな…。

…『ほら…これ上げるよ』とか言って

万年欠食児童とかに食料を与えたりすれば…な。



俺の発想自体が壊滅的に貧相なだけかも知れないが…。


……使えねー。


…………………いや!

食事…というか、栄養の摂取方法や内容が違うのかも知れない!



胃腸や食道どころか…。


口述もできないから…勿論口も開かないし、歯も無さそうなんだよなー、この身体。



大体、呼吸もしてないしな。



口からの能動的摂取とかじゃないのかもな…。


だとすれば…。

皮膚からの全身吸収系かなー?


んー。


なら例えば、週一で………。

森林浴、滝壺の近くでマイナスイオンを浴びるとか。


異世界と仮定するなら…。

精霊力とか、マナとかの不思議パワーの吸収…。



……………………しかし、そうなると…。

…嫌な可能性まで…考察してしまう…。



…全身に生娘の純血を浴びる、とか?



……………………………………だって!

異世界ファンタジーなら、吸血鬼設定ってのも考慮すべきじゃないのかい(逆ギレ)!?



ああ、恐い…。


俺は『何者』で、ここは『どんな世界』なんだ…。



…………あと、俺がこんなに惑乱してるのに、

ローテと宿屋の親父…いつまで話してるんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る