蘇り転生の魔王、絶滅寸前の魔族を救う！ ～ 見知らぬ百万の命より、輩(ともがら)を優先するのは当然だろう？ ～

魔王、地動説を語る！

微睡みの中で夢を見る。

そこは大きな城の中であり、自分は玉座に座っているが、どちらかと言えばじっとしているのは好きじゃなかった気がする。若い頃は人狼族の中で最上位にある天狼のマルコシアスや吸血侯爵のブラドと一緒に城下町に出かけて一杯飲んだりもしていたな……

二人とも結婚して、子供ができてから構ってくれなくなったけど、確か最近、マルコのとこのギリアム坊に妹ができて、出産祝いを持って行ったか？いや、ずいぶん前だった気もする。まてよ、ブラドの娘のスカレがギリアム坊と同じ年に生まれて、その7年後だから……

ぼんやりとした頭でそんな事を考えていると瞼を閉じていても感じる強い光が網膜を焼く。

「……… ここは」

確か、会社のデスクで寝落ちしたはずだが…… やたらとフカフカしたベッドの上だ、しかも何か良い香りがする。

そして、何故か俺の身体を支える絶世の金髪美女、コスプレ風のドレス姿だ。

どう反応しろと言うんだ。

「お目覚めになられましたか、おじ様」

おじ様？いや、俺に姪っ子はいるが日本人であって金髪ではない。

「おじ様？」

じっと血の様な赤い瞳で見つめられる。

ん？何か記憶の底に引っ掛かるものがある……

「…… スカレか？」

「はい！レオンおじ様！！」

記憶が混濁して、思わず頭を押さえる。自身の記憶の中に幼い金髪幼女の姿があり、よく玉座に座る俺の膝の上に乗っかってきていた様な……

「何となく、君の事は思い出せそうだが、記憶が定まらない。そして俺は田中一郎だ」

「イチロー？」

順を追って思い出しながら整理していく。確か、俺は魔王城で勇者一行と戦い、相打ちとなったはずで…… その次の記憶は“たまごポーロうめぇ”だった、亡き母がよくおやつにくれていたのだ。

「なぁ、スカレ、輪廻の輪に入った魂は何処に行くと思う？」

「？時間を得てまたこの地に生まれいずるのでは……」

「いや、違うな。世界は一つではない」

「それはどういう事ですか？」

部屋の大きな鏡に向けて手を伸ばして、遠見の魔法で空に浮かぶ二つの月を映す。

懐かしくも今は違和感が拭えない、赤と青の月だ。

「恐らく、この惑星ではない、彼方の宙(ソラ)に地球という星がある」

「おじ様、蒙昧な私をお許しください、惑星とは？」

「少し、質問させてくれ……この世界は真っ平で、最果てには虚無が漂うという認識であっているか？」

「その様に人間どもは言っておりますが、最果てを見た者などおりませんゆえ、判断しかねます」

少し、前世の記憶から船に乗った時の事を思い出す。そこから見た陸地の山脈はふもとから見えなくなっていったはずだ。つまり、この世界には水平線が存在する。

「スカレ、落ち着いて聞いてくれ、この世界は丸いんだ」

「えっ？丸ければみんな滑ってしまいます」

そこから、スカーレットに対する科学の授業が始まった。

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