第5話 中学校の友達

 6月3日、土曜日の午後1時、玄関のチャイムで目が覚めた。

 妹の山村 花音(やまむら かのん)が勇太の部屋の中に入り、

 「お兄ちゃーん。梨央ちゃんたちが来たよ~」

 と言ってきたので、ベットの布団の中で勇太は、

 「勝手に入っていいよ」

 と答えた。

 花音は、

 (こんな部屋に、よく人が呼べるなぁ)

 と思いながら、梨央たちを出迎えた。

 

 そして、部屋の中に、ノックもせず、井伊 梨央(いい りお)と板坂 有希(いたさか あき)が入ってきた。

 梨央が

 「やまちゃんの部屋、相変わらずだねぇ」

 と言いながら、勇太が寝ている隣に寝転んだ。

 やまちゃんとは、勇太のあだ名だ。

 有希も

 「こう暑いとだれるよねぇ」

 と言いながら、同じく寝ころんだ。

 勇太は、別にいつものことなので、気にもしないが、2人が隣に寝転んできたので、熱くなり、ベッドから出た。

 勇太は眠い目をこすりながら

 「おはよう」

 というと、2人は

 「おやすみなさい」

 と答えて、横になったまま、目をつむった。

 勇太がため息をつき、

 「朝飯食ってくるから、適当にしてて」

 と言って、1階にあるリビングに行った。

 リビングで、朝食を食べていると花音が

 「何時に寝たの?また、インターネット?」

 と言ってきたので、勇太は

 「昨日の朝から、ずっと、寝てた」

 と答えながら、パンをほおばっていた。

 そしたら、花音は、

 「えぇ~信じられない!一昨日も昨日もお風呂に入っていないんだよ?よく、そんな状態で、女の子を呼べるねぇ」

 そういえば、そうだった。

 さすがに、この状態で女性にあったら、いくら友達であっても、引かれてしまう。

 朝ごはん食べ終わったら、シャワーを浴びよう。

 花音は昼食のパンを食べながら、

 「今日は、お母さんは仕事だから、家事も手伝ってよね。って、お兄ちゃんは、そんなことしないか」

 と花音はあきらめながら言った。

 「と・こ・ろ・で、お兄ちゃんは、いつも女の子呼んで、ナニしているのぅ?」

 と花音が聞いてきたので、勇太は

 「花音が期待しているようなことは、していないよ。今日は、むしろ、あっちから来たんだから。」

 と、ぶっきらぼうに答えた。

 

 昼食を食べ終え、花音は、スマートフォンに夢中になっている姿を背にして、オフ場へ行き、シャワーを浴びた。

 急いで、紙と顔、体を洗い、洋服は、自分の部屋にあるので、着ていた服を着て、自分の部屋へ向かった。

 そして、自分の部屋では、梨央と有希がスマートフォンに夢中になっている姿を見た。

 勇太は、

 「何やっているの?」

 と聞いても、見向きもしない。

 しばらくして、一段落したのか、2人はスマートフォンから目を離し、勇太を見た。

 「あれ?やまちゃん、いたの?」

 と梨央が言ってきたので、勇太は、

 「いるよ!俺の部屋だからな!」

 と、ちょっと怒りながら言い返した。

 「ところで、何をしていたの?」

 と聞くと、有希は

 「プトプトっていうゲーム。今、流行っているんだよ~。なんでも、パズルを解くと、それに応じて、仮想通貨がもらえるんだって!」

 と嬉しそうに言った。

 勇太は興味本位に

 「仮想通貨?カワダコイン?」

 と聞くと、梨央は

 「カワダコインももらえるというか、交換できるけど、ゲーム内でPポイントをためて交換って感じ。まぁ大抵は、ギフトポイントかな?アプリの購入や他のアプリの課金もできるし。」

 と答えた。

 勇太は、

 (ギフトポイント?あぁ~アプリを買ったり、アプリ内で課金できるポイントのことか。それにしても、カワダコインがもらえるなんてなんて太っ腹なんだそのゲーム)

 と思いながら、また、梨央と有希は、プトプトをやり始めた姿を眺めていた。

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