ロッキンはテキストサイトで、わたしはミクシィで暮らそう。ともに生きよう。


大澤:なんかすっかり小説っぽい小説を書くようになっちゃったけど、たぶんロッキンはアレだよね。初期の文章の雰囲気てきに、元々はテキストサイトとかそのへんの育ちの人だよね?


ロッキン:そうなんです、小説を書くまえに誰も読んでないブログも1年くらい書き続けてたんですけど……元はhtmlタグ(死語)をぽちぽちメモ帳に打って、誰も読んでないテキストサイトを公開して悦に入ってました。


大澤:あはは、つらい……。まあ、誰かが見てても、見てなくても、書いたものとか書く習慣っていうのは確実に自分の血肉になるからね。でもやっぱり、そのへんの出自ってなんか滲み出るよね。わたしはアレ。文章を書く習慣はミクシィの日記から。


ロッキン:ああ、納得。


大澤:ミクシィの日記みたいな小説でしょ?


ロッキン:日常で得た気づきとかテーマが爆速で作品として叩きつけられるの、日記っぽいなと思ってました。


大澤;あのね~フォロワーん万人とかが当たり前のツイッター宇宙だと屁みたいな話なんだけど、マイミクが100人いたんですよ。日記と、あとちょっと絵描いたりとかで、週に二回くらいは更新してて。


ロッキン:ああ〜〜、いいですよね、優しい世界があそこにはあった。


大澤:パスワード忘れて爆破しそこねたから、この広いインターネット宇宙のどこかには今でも大澤めぐみさんのミクシィの日記が残っているんだよね……。


ロッキン:そういうネット遺跡化した自分のサイトの文章とか見てると、もう客観視通り越して親戚の子供を見るような気持ちになって良さ。発掘しましょうその黒歴史も。


大澤:あと4~5年は寝かせたいかな……。それはそうと、テキストサイトとか日記とかやってた人はたぶん小説書くのも楽だよね。ちょっとスライドさせるだけでそれっぽい小説にはなるから。


ロッキン:そうですね、基本的には日記なんですけど、テキストサイトって文章をこねくり回してウケてなんぼ、楽しませてなんぼっていう文化があるんです。でも当然普通のオタクの日常なんてクソつまらないんで、1の事実や感じたことを誇張して100にしたり、あと徹底的な自虐で笑える話にするってことを追求してました。ほとんど自分が主人公の小説ですね。


大澤:ただ「それっぽい小説」と「小説」の間にバリクソ厚い壁があって、まずは文字数の壁だよね。10~15万字っていう一冊の本の規模をコンスタントに書き上げるにはなにか別の方法論が必要っぽい。


ロッキン:正直、全然分かってないのでそれを知りたいですね。誰かに創作論について語れることが全く無い。俺たちは雰囲気だけで小説を書いている。気合いにも限界がある。


大澤:や、本当だよね。今回のこれこそまさに雰囲気だけで小説を書いているふたりの対談だよね。ほんと失礼かもしれないけど冗談抜きでロッキンは雰囲気だけで小説を書いているんだろうなぁという感触がある。ちょう仲間意識。


ロッキン:何も決まってないんですよね、前の対談にもありましたけど、歩いてるとニョキニョキ木が生えて道が出来て、向こうから誰からがやってくる感じ。イメージとしては明晰夢を見てるみたいな。発想はあるけど意思は無いんです。


大澤:わかる。とりあえず「これをやりたい!」みたいなワンアイデアはあるんだけど、そこに至る道筋っていうのはまったく分かっていないまま、こらえ性がないのでもう書き始めてしまう。ちゃんと計画を立てられないの。


ロッキン:プロットをね、書けないんですよね……。


大澤:デビュー作っていうのは既にあるものを売るかたちになるからまだ気楽なんだけれど、それ以降、商業作家というのは基本的に「まだないもの」を売りつける仕事になるからね……。ロッキンはここからがひとつ目の大変な時期だね。二作目の企画を通すという。


ロッキン:何とかして無から有をひねり出しつつ、生き残って行きたいところです。次の作品を書くにあたって、書きたいテーマが特にないのが最近の悩みです。今まではそれがこだわりなく物を書ける強みでもあったんですけど、本を出すって真剣勝負ですから。ふざけてるとすぐ分かっちゃいますもんね


大澤:でもそこは書いているうちに見えてくるっていう部分もあって、たとえば限界集落オブザデッドは一番最初の最初のやつは本当の本当にシンプルに「強いジジイが腐ったゾンビをぶっ飛ばす!!!」だったと思うんだけど、改稿を重ねるにつれて恐山はちょっと後退して、ケイの成長がメインになってきたよね。たぶん、書いたことによって見えてきたんだと思うんだけど。


ロッキン:そうですね。最初はそもそも若者を出す気なんてなかったはずなのに、書き直す度に前に出て来るのが不思議でした。彼が居なかったら多分ジリ貧で人がどんどん死んでいくバッドエンドになってたろうなと思うところもあって、暗い世界の中で救いの有る物語を書きたかったのかな、と。


大澤:やっぱり読後感が爽やかなものを書きたいよね。読んでよかった! ってなるもの。


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